出版社内容情報
時空を超えて展開する壮大な母子の物語。母の愛、子の母恋がナラの山水、ケモノをも突き動かす。現代女流文学の金字塔たる長編
内容説明
ナラの大仏を破壊した少年モリオの涙はやがていにしえのキンギョ丸、アイゴ若の説話にリンクし、アイミツ丸の悲劇と絡み合う。物語が物語を呼び、記憶が記憶に重なって、めくるめく小説世界が立ち現れる。引き裂かれた母子とともに、さまざまな時代を、夢と現実を往き来する、まったく新しい読書体験。時空を超えてエキサイティングに展開する驚くべき物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
八百
14
現代日本女流文学の金字塔だそうですが…そうかなぁ、溶けた食えない金平糖にしか思えないんだけど。ヤマネコドームが理解できずのリターンマッチだったのだがやっぱり読みにくいし理解不能でした。奈良においては神の使いである鹿を殺してしまう意味は?そして大仏まで破壊しようという冒涜は許されるのか、それほどまでに大胆な振る舞いをするのであればそれなりの読み応えと納得させるだけの結果が欲しかった。偉大なる父上のDNAはどこにも感じられず多分この人の本はもう読まないと思います2014/05/11
そのあとに続く
12
身体・時代を幾度も経ても繋がりは消えることない。説話の構造を借りて、確かに実験的ではあれどひどく読みにくさはない。耳を切り落とされた鹿、死期を待つ僧、肉体の痛み。ただあまりにも淡々と描かれる生よりも、前面に押し出されるのは意志。本編間際のページが与えるカタルシスは美しいものだったが、最後に00として加えられた章は蛇足のようにも思えた。2016/07/21
鯖
12
ナラを舞台とした幻想小説。どうしてか自分でも解らないのだけど、10年くらいずっと死病のレポだと思い込んでいて、タイトルは見かけるけれど読むのを避けていた。シカを殺した息子と、ダイブツを壊した母が平安時代や室町などなどの奈良に輪廻転生を繰り返し、ぐちゃぐちゃと終わらない葛藤と旅を続ける話。読む前に思い込んでいた「死病」という印象もまんざら間違いではなかったのではないかと思うくらいに、母親の息子に対する妄執がすさまじくて、ちょっと辟易した。2014/11/28
さつき
6
うーん…読み終わっても、正直なところ何を言いたいのかわかりませんでした。幼い息子を残して死ななくてはいけなかった母の妄執。残された息子の母への愛惜の思い。幾度も生まれ変わり続けるたびに繰り返す別れ。親子の情というには、生々しく重たく、共感はできませんでした。2015/10/01
paluko
4
読友さんから勧められて手に取りました。タイトル通り奈良をめぐって展開する物語ですが文化や伝統の負の側面、個人の力ではどうにもならないしがらみの重圧感、息を詰まらせる多湿感……からの脱出は果たして成るのか? 興福寺、善阿弥などの固有名詞がコウフク寺、ゼンアミと記述され鎌倉時代が舞台らしいのにあえてサイド・ビジネスとか連歌界へのデビューとか外来語で異化された世界で登場人物は未来を追想する。破天荒で、よくわからないながらも痛快な読後感。2019/04/20