内容説明
光り輝く、夜のあたしを見てくれ。堕落ではなく、解放。敗北ではなく、上昇。昼の鎧が夜風にひらめくコートに変わる時、和恵は誰よりも自由になる。一流企業に勤めるOLが、夜の街に立つようになった理由は何だったのか。『OUT』『柔らかな頬』を凌駕する新たな代表作誕生。
著者等紹介
桐野夏生[キリノナツオ]
1951年、金沢生まれ。成蹊大学法学部卒。1993年、「顔に降りかかる雨」で第三九回江戸川乱歩賞受賞。1998年、「OUT」で第五一回日本推理作家協会賞受賞。一九九九年、「柔らかな頬」で第一二一回直木賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
れみ
148
娼婦をしていたユリコと和恵が殺された事件をきっかけに、ユリコの姉で和恵の同級生である主人公をはじめ様々な人物の目線から語られる物語。タイトル通りグロいしエグいし、登場人物のほぼ全てが不愉快なことをする。だけどなぜか目が離せなくて惹きつけられる。そして、あなたにもこういうところあるでしょ?と突きつけられているみたいで本当に怖かった。でも面白かった。2015/08/08
藤月はな(灯れ松明の火)
99
アメトーク!!の光浦靖子さんの紹介からずっと、読みたかった本。初っ端のユリコの姉(そういえば、この人の名前は最後まで出てなかった)の「男の人を見ていると、この人と私からどんな子供が生まれるのだろうと想像してしまう」という独白にドン引きしてしまう。でも私も歳を取るとそう思ってしまうのだろうか?世間様の中身はスカスカな「理想」に阿り、にこやかな顔の下でドロドロに煮詰まって表面張力ギリギリのドス黒い「女」の部分が炸裂しているのが「女であることに、世間に、復讐するのだ」や「セックスは好きだけど、男は嫌い」だと思う2016/06/19
らむれ
98
人間ってこんなに恐ろしい生き物だっけ。まさに怪物。自分の価値を見出せない怪物たち。哀れ、と思う反面、自分のすぐ背後に彼女たちが堕ちていった深淵が迫っている気がしてぞくりとする。女だけじゃない。世の中のグロテスクな部分が凝縮されたような作品でした。学校の階級社会も、会社での無言の圧力も、女の勝ち組意識も、報われない努力も、中国の貧しさも、全部どうしようもない。どうしようもない社会に対する著者の怒りや疑問が伝わってきてきました。ものすごい負のオーラ。でも、上下組500頁を一瞬で読み終えたのも事実。2015/12/15
研二
84
女子高の話が一番迫力があった。それと、主人公とおじいさんのやりとりもよかった。登場人物の中国にいた頃の話は、迫力はあったが、同じ小説の中に入れなくてもいいような気がした。2015/07/04
みのゆかパパ@ぼちぼち読んでます
82
主人公である「わたし」の妹ユリコと、高校時代の同級生・和恵が、ともに渋谷の街娼として殺された。物語は「わたし」の語りを通じて、なぜ彼女らが街娼となり、殺されねばならなかったのかをたどっていくのだが、とにかく彼女たちの心情が題名通りにグロテスク。確かに彼女たちが直面した環境はえげつないものではあったけれど、そのなかで自分を守るためには、ここまでゆがむしかなかったのか。現代社会への鋭い問いかけをはらんだ濃密な人間ドラマとしての読み応えもあったが、その負のパワーにどっと疲れてしまったというのが率直な感想である。2014/02/10
-
- 電子書籍
- イオ 大合本1 1~5巻収録