内容説明
食べもののある風景から立ちのぼる、遠い日の女たちの記憶…ひたむきで、みだらで、どこか切ない短篇集。
目次
プロローグ 唇ふたつ
春(豆腐弥左;春の蕎麦;二階の女;悦っちゃんのジャム)
夏(桃狂い;へちま;写真の女)
秋(山茱萸の秋;とろろ芋;真夜中の饗宴;月心寺の真桑瓜;ゼームス館の犬)
冬(粒あん漉しあん;煮凝;靴が鳴る;寒椿ほろり;喪服の女)
エピローグ おでん
著者等紹介
久世光彦[クゼテルヒコ]
1935年東京生まれ。東京大学文学部美学科卒業。東京放送を経て、79年にカノックスを設立、ドラマの演出を手がける。92年「女正月」の演出により芸術選奨文部大臣賞受賞。93年『蝶とヒットラー』で第三回Bunkamuraドゥマゴ文学賞、94年『一九三四年冬―乱歩』で第七回山本周五郎賞、97年『聖なる春』で芸術選奨文部大臣賞、01年『蕭々館日録』で第二十九回泉鏡花文学賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
30
タイトル通り男女に関する記述が多い。妖艶である。平成の書であるが、戦中戦後の時代が多い。ねっとり感のある短編集。2019/11/08
青豆
19
遠い日の女性達の記憶を食と絡めて描いたエロティックでどこか切ない短篇集。作者本人の体験談といった体裁であるが、本当に全て実体験なのだろうか、幾らかの虚構も混ざっているのだろうか?食欲と性欲は似ている。飽くなき欲望を抱える男女の淫らで妖しい世界。久世さんらしい退廃的な美しさのある作品。2015/02/28
林 一歩
16
現実と虚構の境界が曖昧な性と食がテーマのエッセイ(短編)集。本能に導かれるまま食べ交わる男女の姿は、淫らで、狂おしくて、哀しい。2014/07/05
朱邑
9
久世さん初読み。性と食は似通った部分がある。飲食をテーマにした男と女の物語。女性にはもう一つの唇がある…艶かしさをとても感じるけど、どこか怪談を匂わせるお話たち。不思議な世界です。どのお話の主人公もすべて『ぼく』なので、作者の実体験なのか?と迷いながら読みました。2016/06/03
redbaron
8
男と女が肌を寄せ合っているのに、なにか哀しい。「悦っちゃんのジャム」「桃狂い」「とろろ芋」が好き。もうひとつの唇か~。2015/01/01