内容説明
元禄十五年十二月十五日。おぞましい狂乱の一夜、あだ花のように咲いた恋が、ひときわ美しく。狂おしい熱情。息もつかせぬ展開。気鋭の時代小説書き下ろし。
著者等紹介
諸田玲子[モロタレイコ]
1954年、静岡県生まれ。上智大学文学部英米文学科卒。外資系企業勤務をへて、翻訳、作家活動に入る。96年『眩惑』でデビュー
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感想・レビュー
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も
38
生類憐みの令によってできた御囲でお犬さまの世話をする犬吉。御囲の中の様子がよく描かれていて、犬の獣臭が漂ってくるようでした。かつての愛犬雷光を思う気持ちがよくわかり、つい目頭が熱くなりました。たった一晩の出来事だけれど、ぎゅっと濃い話でした。2015/08/11
さなごん
24
生類憐みの令ってこんなんだったんだ。途中犬吉のされていることを読むのが耐えられず斜め読み。最後は明るい光が差し込んできたのかな?たった1日の話なのにぎっちり詰まっていた2015/09/26
天笑院たか姫
5
元禄十五年十二月十五日、それは突然始まった。犬吉は自分の為に殺された雷光を思い御囲犬のお世話係を勤めていた。その日、江戸中がお祭り気分で浮かれていた。犬吉は自分の身やお犬様の身に酷いことがことが起きるとは思ってもいなかった。雷光が取り持ってくれた縁だと思った。依田と幸せになって欲しい。2016/09/03
としえ
3
生類憐みの令により、野良犬や病犬・凶暴な犬などを収容するための「御囲」が作られた。それから七年後、御囲でお犬様の世話をする人たちの様子を、犬吉と呼ばれる女性の目から見た物語。この時代の話はいくつか読んだことがあるが、御囲で働く人の話は初めてで新鮮だった。多い時で十万匹を収容したという御囲は、鳴き声の騒音も激しく、獣臭や糞尿の臭いもすさまじく、また、女たちは男に体を売らなければ食べていけないような暮らしぶりが書かれており、”生類憐みの令”の悪法ぶりを再認識させられた。暗い気分になったが、終盤で救われた感じ。2013/03/14
ねね
3
人嫌いな吉は、生類憐れみの令のより病や凶暴な犬を収容する御囲で犬の世話をしたり、男たちの慰み者になっていた。御囲のぞっとするような生活、獣の臭いが鼻に付く気さえするすさまじい文章に圧倒された。やっとめぐり合えた雷光のような心持の依田様を思い切り、吉は軽やかに御囲を出る。力強い主人公に感動しました。2012/02/08