内容説明
漁師の村、北の町、そして都会で。人生の果てをおだやかに見つめるひとびとの暮らしを、静謐な筆致で描き出した珠玉の短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
103
元受刑者の死。ホームレスの死、自殺者、同窓生の死他、著者の淡々とした文章に惹かれる。ここに出てくるような死は特別なものでなく、日本の中ではもっと特殊な死がありふれているのかもしれない。今は死という言葉がありふれているにしては間近な人の死の対面は希薄になっているのではないだろうか。病院から直接火葬されるケースもあり、これから親戚というものが減ってきたら一層に真島な死が遠のくような気がする。死ということについてなにか踏み込んで知りたいと感じた。図書館本2022/02/17
ともくん
39
死を題材にした短編集。 他の吉村昭の作品と比べるとあっさりしていて、読みやすいが、重厚感が足りない。 しかし、静かに徐々に沼に嵌っていくような死の恐怖感がある。2018/07/08
Masashi_1234567
23
短編なので、なかなか記憶に残らない。全て死に関する話だったと思う。読後感は良くも悪くもない。ただ、この作家の文章は読みやすく好きなので、他の作品も読もうと思う。2022/03/08
ヒラP@ehon.gohon
9
久し振りの吉村昭作品です。短編の中に凝縮された世界に、精神的な奥行がしっかりと埋め込まれていて、長編で読んでみたい作品ばかりです。吉村昭の物書きとしての真摯な姿勢がうかがわれます。2016/04/03
しゃんしゃん
7
現役を引退し地域社会に多少の関わりを保ちながら日々を過ごしている人たち。前科36犯の老受刑者の君塚を、保護観察所長の清川は躊躇しながらも更生へのプログラムを組み奔走。獄死だけは嫌だという彼は教会の仲間たちにアパートで亡くなっているのを発見される表題作。日本人として内省するということの大切さを感じさせられた。穏やかで静かで、そして哀しい生と死の7つの短編集。「時間」は著者が事実を超越したフィクションの世界にふみ込んだ作品と言う。印象に残った。2017/09/16