内容説明
小さな曾祖母。人間界になじめなかった蛸。男の家から海へと帰る海馬。台所の荒神さま。遠いカミの世から訪れたものとの交情を描く傑作短篇集。
著者等紹介
川上弘美[カワカミヒロミ]
1958年東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。94年、「神様」で第一回パスカル短篇文学新人賞を受賞。96年、「蛇を踏む」で第一一五回芥川賞を受賞。99年、『神様』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞を、2000年、『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞を、01年、『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よこたん
41
“妙なものにかかずらわってしまった。” 此処であって、此処ではない場所。ほの暗い水底の小さい穴を覗きこんだら、しゅるりと吸いこまれた先での日常のような。ぬめっと、ぐにゃぐにゃと、ゆらゆらとまとわりついてくる。さまよう先々には色々、いる。余りにもいるからと、驚くなかれ。其処では、一番の異形は、妙なものは、己自身なのかもしれないのだから。イカカレーラーメンやカツレツをいただいたら、そろそろ帰ろう。帰らせてください。あれれ?出口はどこだろうか。2018/08/31
るい
17
わたしには合わなかった… 気持ち悪い嫌悪感が沸き上がってくるばかり。2018/09/19
八百
14
フェリーの寝台で読了…この奇妙な「ゆらぎ」は果たして船なのかそれとも八つの不思議な幻想譚か。川上さんお得意の動物系魑魅魍魎のお話はときに恐ろしくときに滑稽にそしてときに愛しい存在に姿を変えて"人"に寄り添う。「龍宮」が良い、玉手箱ならぬカツレツを貪りながら十四才の少女から百歳の老婆に姿を変えるイトを縦軸に龍宮伝説を横軸にしての不思議な幾何学模様は読み手を見事に煙に巻く。「あんたは生まれて、食べて、知って、つがって、忘れて、眠って、死ぬんだよ」…罵られながら凡夫はただひたすら歩くのみ哉2013/04/13
マサキチ黒
12
さみしかった。溶け合うような瞬間があったのに、瞬間はすぐに遠ざかり、すぐに人との間はあやふやになる。ずっとこの先も生きてゆくのか。こんなさみしいのに。「轟」。初期の川上さん。ほんとにこの作者好きなんだなと改めて思う。何を読んでも引き摺り込まれて意識朦朧となるまで何かされて開放される。完全無欠ではないのに完璧。これはやめられない。2021/06/12
naminnie
7
再読。耐性ができたのか、読後に以前のような、ふわぁぁとした感覚はそこまでなかった。しかし、もうどこか連れて行かれるような、眠る直前のようなこの感覚は変わらない。いいなぁ、好きだなぁ〜。2010/10/02