内容説明
望んでも産めない女。子供を奪われた女。母親になれないのに執着する女。三人の女たちの情念が交錯する傑作サスペンス。第19回サントリーミステリー大賞受賞作。読者賞ダブル受賞。
著者等紹介
海月ルイ[ウミズキルイ]
1958年、京都市生まれ。華頂短期大学幼児教育学科卒業。1998年「シガレット・ロマンス」で第5回九州さが大衆文学賞受賞。同年、「逃げ水の見える日」で第37回オール読物推理小説新人賞受賞。2002年「子盗り」で第19回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kekera
11
子どもと引き裂かれる母、切望しているのに母になれない女、望まない子どもを生む母、いろんな母親の思惑が絡み合い大きな渦になっていく。一番腹立つのはそんな女性を利用しようとする峯岸。でも最後は穏やかに終わって読後感は良かった。2014/05/21
horihori【レビューがたまって追っつかない】
9
旧家に嫁いだものの子どもに恵まれず、追い詰められて子どもを盗む女。 暴力的な夫と姑に子どもを奪われ、養育権までなくしてしまった女。 望まぬ子どもを捨てたのに子どもに執着する女。 3人の母親の情念が交錯してストーリーが展開。 3人よりも4人目の母親クニ代の存在感が、この話の本質なのかも知れない。 我が子を思う故に常識や倫理を逸脱していく女たちの姿には、言葉にできない「すごさ」がある。 2008/05/09
だい
8
絡み合う人間模様と結末。ダイナミックな展開は映画のよう。子を守る母親の強さと愚かさは、いつの世も永遠に変わらないものかもしれない。目を瞑るとそれぞれの子に向かい合う母親の愛のかたちが伝わってくる。決して消え失せない、山よりも高く、海よりも深い母の愛。2016/08/03
モモ
8
旧家の嫁の立場で後取りが出来ないと周囲から責められる嫁。そこに無理矢理子供から離された看護士。母性愛を利用して自分の利益の為に悪巧みに荷担させる男。自分の快楽の為だけに動く女。その四者が絡みながら、タイトルの子盗り。時間軸がいったりみ戻ったりがあるがどうなるか気になり読み進んでいった。最後は未来がみえる感じで終わったがこれでいいのかな?とも思ってしまった。「8日目の蝉」のように15年後が読んでみたい気がした。2014/05/04
Junna.S
8
読友さん、おススメ本。初読みの作家さんだったが、あっという間に物語の世界に引き込まれてしまった。榊原美津子や辻村潤子の置かれた状況は、「今どきそんな」と思えるかもしれないが、田舎の旧家なら現在でも十分あり得る話だと思う。三人三様だが、子供を望むのに母親の権利を脅かされた彼女たちには、共通して女の情念、母親の意地を感じ、同性としてとても身につまされて胸が痛かった。女性の心理描写が細かく、共感できる部分もあるが、ストーリーの顛末は驚くほど意外なものだった。救いがあると思えばあのラストはハッピーエンドなのかも。2013/04/08