内容説明
首のない怪物、密室殺人、移動する死体。本格ミステリの醍醐味が凝縮された傑作。
著者等紹介
飛鳥部勝則[アスカベカツノリ]
1964年(昭和39)年、新潟県生まれ。新潟大学大学院教育学研究科を修了。公務員として勤務する傍ら小説の執筆を始め、98年に『殉教カテリナ車輪』で第9回鮎川哲也賞を受賞しデビューする
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感想・レビュー
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Kircheis
338
★★☆☆☆ 友人の画家の死体を発見した久我だったが、翌日死体は密室内に移動していた。 この密室の謎は中盤で多くの人が勘付くのではないだろうか。犯人も動機も全く意外ではなく、「ふーん」て感じ。 ミステリではなく、過去に囚われていた久我の成長物語として読むと悪くないが、何故ヴェロニカのことを吹っ切れたのか納得感が薄いように思う。 また絵画の技術等の蘊蓄が凄いが、作品の面白さにあまり寄与しないのが残念なところ。筧兄弟の歪んだキャラは良かったのに、大してストーリーに絡まないのも惜しい。2024/01/22
W-G
221
かなり内省的な作品ゆえに、琴線に触れるかどうかは読者次第。ミステリというよりも純文学。地味という評価も多いが、確かに事件は地味。こういう作品でこそ絵画の解釈を物語に絡めまくって欲しかったところだが、挿入されている絵画の物語への貢献度は低く『殉教~』のような画家の内面の切り取り方が出来ていないのが残念。それが実現していれば結構な傑作になったかも。登場人物の存在意義の弱さもすこし気になる。筧道夫は割りと濃いキャラの割りに、筋トレのためだけに登場?丸川武も二度も出てくる必要もなく、筧亮子も結局本筋に関わりなし。2016/11/12
nobby
87
これは静かで真っ当なミステリーでいて、悲しくも異質な恋愛小説。ある画家の死をめぐり死体移動や密室にホラーまで(笑)限られた場面や人物を背景に、その真相と最愛の女“ヴェロニカ”の存在が明かされていく。大仕掛けは無いが、気付いてみれば伏線あれやこれや。芸術家ならではのエロや他者への達観などは理解し難いが、その繊細さ故の苦悩や葛藤には何だか切なさ感じる。作者独自見解なゴッホ殺人説と重ねて推理していく終盤が興味深い。飛鳥部作品の中では、かなり地味ながら個人的にはお好み♪2016/10/24
雪紫
60
再読。青春の齢はいつまで?一般的なミステリと言う意味で言うなら「レオナルド」の次にまともなのは変わりなく・・・まあキャラやトーンに飛鳥部さんらしさは出まくりだし、彼の作品特有の危険人物候補はいるけど(しかもそれに安心感を抱くという)。初読時点から密室には勘付いてたので早く気付けと思ってたもののあの時まで気付かなかったことに意味があるのだと思い知らされる。これはスランプを迎えたふたりの画家の今更な青春であり、あとがきの暗い青春を含めての作品。最後に久我が描いた絵が見えた時、どんな想いが心に浮かぶのか?2024/01/18
koma-inu
38
独特世界観の、絵画×青春ミステリ。帯に「首のない怪物、密室殺人、移動する死体」とあり本格風に見えますが、本書は主人公久我の、苦悩と妄想語りで大半を占める。殺人事件があまり進行しないまま終章へ。密室を作り出した理由に、身震い。ここまで芸術に執着するとは。ちなみに首のない怪物の真相は、バカミス。あとがきの「失われた青春」、これが本書の全てで、共感した自分に、ちょっと寂しさも感じました。飛鳥部さん好きでないと感情移入が難しい、ある意味飛鳥部さんらしい作品。2025/01/04