内容説明
若くもない。といって老いてもいない。過去を懐かしみはしないし、明日に期待もしない。ただ運命に―天の刻に身をゆだねる6人の女性たちが織りなす著者の新境地を示す珠玉の作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アーモンド
28
40代女性6人の恋愛が書かれた短編集。死が見え隠れしたり、老いの気配を感じたり、主人公の心のうちが静かに書かれている。2019/09/15
スパイク
21
あたりまえだけど、自己決定、自己選択は人が生きていくうえでとてつもなく大切なものであるのだとあらためて思った。そりゃ、何もしないでカネが舞い込んできて大金持ちになれるわけはないが、たとえその為の才能や努力がなくても神様のいたづらで(宝くじみたいに)そうなる可能性がゼロではない。だからこそ自分で選んだことをそれが実現しようがしまいが、なんとか受け入れることはできる。でも死だけは確実に訪れる。不死を選択する手立てはないのだ。だから、なおのこと死と対極する生(≒性)を手放すことを受け入れることはできないんだな。2015/04/11
matsu04
19
短篇6つ。ありふれた幸福な生活からは少し離れ、あるいは生きることにもあまり執着していないような40代後半の女性たち。いずれの短篇もなかなか良い。表題作もいいなあ。中でも「襞のまどろみ」が刺さる。「肉塊が多恵の上でリズムを刻んでいる。阿保のようなただの肉の塊である」…ううむ、凄い。2024/03/25
赤い肉球
16
久し振りの真理子さんの短編です。アラフォーの女性たちを描いた作品集。真理子さんの描く不倫してる女性は、なんか嫌ではなかったけれど、この女性たちは嫌悪感があったなぁ、なぜでしょう。一番印象的なのは「天の刻」。私も同じような経験したので、主人公の気持ちが分かった。もう人生の折り返しを過ぎてるんだと感じた一冊でした。2016/05/14
cithara
13
小池真理子の作品が死の影に彩られているのは、昨日今日始まったことではないのだと認識した。『月を見に行く』→レオナルド・ディカプリオについて「今はいいけど、そのう ちただのデブになりそうな子ね。」小池さんが今のディカプリオを見たらどう思うだろうか? 少なくとも「ただのデブ」ではないだろうな。ああ、本作品の主題はこんなことで はないのに(人が生きることの意味を問うていると思うのに)どうしても余計なことを考えてしまう。本作品が書かれた時点では(1998年)ディカプリオは今ほどビッグネームでなかったはず。2017/09/20