出版社内容情報
慶長の役で日本に連れてこられた朝鮮人陶工たちは、和朝の文化対立をどんな知恵で生き抜いたか?各紙文芸時評で絶賛された話題作
内容説明
クニも名も捨てさせられたわしだちだからこそ命がけで守らねばならぬものがある。慶長の役で連行された朝鮮人陶工たちのゴッドマザー百婆が、夫の葬儀を朝鮮式でやると宣言すると、九州は北部の陶芸の里で村中が大騒ぎに―。各紙文芸時評で絶賛された傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なゆ
58
ここは日本なのだから日本式の葬儀を。いや、クニのやり方で弔いたい。朝鮮からの渡来人陶工たちが九州にやっと根付いた頃、大窯主の十兵衛が亡くなる。妻の百婆はクニのやり方でと譲らず、倅たちは今後のことも考えるとそうもいかない。混乱のなか和朝二部立てごちゃまぜ葬儀がはじまる。なにしろ、日本と朝鮮の弔いの形や考え方がこんなにも違いすぎるというのが、悲劇の…いや喜劇のはじまりというか。そして、笑えるのに泣けてくるのだ。あとがきにもあるが、私も朝鮮半島の古い葬式の美しさ、ひたむきに死者を送りだそうとする姿に魂が震えた。2015/08/19
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
41
現代日本以外の世界の死生観、昔の日本の死生観などに興味があった時に読友様のレビューを見て。渡来人一世で大窯元の当主十兵衛の死、同じく一世の妻百婆はクニ(韓国式)の葬式にこだわるが、祖国を知らない二世の息子十蔵は、日本人社会とうまく付き合っていくために日本式の葬式を望む。悲しみと混乱の中、和韓折衷案が持ち出されるが……。強烈な個性と強さを持った百婆と一世の老人たちの息子たちを出し抜こうとする作戦は屈すれど服さずの傲気(オーギ)精神みなぎりつつもどこかユーモラスでドタバタ劇を見ているようでもある。2016/10/09
ぽけっとももんが
7
映画にしたらさぞ面白いだろう。秀吉の朝鮮出兵で連れてこられた陶工たちは、すでに日本人と結婚したり、子や孫は母国の言葉を知らなかったりもする。そのぎりぎりの世代で亡くなった十兵衛を、日本式の葬儀で送るかクニのやり方を貫くか。頑固な百婆の達者な泣きまね、偽物のお経、真っ暗な夜だからできる密約のアレコレ。葬儀とは残される人のためにあるのだと確信した。2016/03/31
shou
3
渡来人の陶工の葬儀の形式を巡り、一見溶け合っているように見えた二つの文化がぶつかる。根本にある思想の違いが行動の違いに炙りだされているのが上手いなあ。不意に深い溝があったことを感じ取った時の悲しさが印象的。2014/08/31
夏子
2
悲しいような優しい気持ちになるような不思議な読後感。百婆の生き様に痺れる。2009/03/03
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- 和書
- バルトークの民俗音楽編曲