出版社内容情報
平凡な主婦、家出娘、新入社員。どこにでもいる普通の人々の手から手へ渡る拳銃と、変貌する人間たち。それは拳銃の意志なのか?
内容説明
袋から取り出し、包装紙を解きにかかった段階で、織江は何となく嫌な気分になり始めていた。奇妙に鼓動が速まっている。大体、その形が嫌だった。剣山にしては大きいし、その割には丸くも四角くもなく、何とも不安定な形状に見えるのだ。そして次の瞬間、織江は息を呑んだ。膝の上に広げられた紙の中から出てきたそれは、小さな、掌にのるほどの黒っぽい拳銃だった。少女から主婦へ、そしてサラリーマンへ。普通の人々の間を巡る一挺のコルトが殺意を刺激する!銃の魔性を描き尽くした異色の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃさち
27
拳銃を手に入れると人はどうなるのか、みんな違った気持ちになり変わっていく姿がよかった。女子中学生の話が1番おもしろかった。好きになった相手は連れ去られ、自分は警察に保護されて家に帰る。きっと家に帰って普通の日常に戻るのだろうとおもいました。2017/08/09
星落秋風五丈原
22
久しぶりに出た同窓会で酔っ払って深夜の新宿で眠っていた主婦は、見知らぬ少女 から銃をもらう。銃を持ったとたんに平凡な主婦に生まれるある種の生きる力を 描いた「母の秘密」他一つの拳銃が辿る運命をさかのぼって描く連作短編集。 「野良猫」「なかないで」「塵ほうき」「置きみやげ」収録。2001/10/27
そのぼん
10
拳銃をひとつのキーワードにした短編集でした。 普通の人々のところへ普通じゃないものが転がってきたら…といった感じでした。 一番最初に収録されていた『母の秘密』がいちばん面白かったです。2012/03/26
なつのふね
9
所持するのも処分するのも困難でメイドインジャパンじゃないものと言えば…拳銃だろう。ひょんなことから 手元に拳銃が回ってきた一般人の逡巡、妄想、拳銃への愛着や執着 手放したときの安堵など 主人公を代えながら 5つ短編小説が描かれている。なかなか面白かった。私の手元にもし 拳銃が回ってきたら?と思うと やはり ここに書かれてるように 妙な反応をしてしまうだろう。作者の拳銃の描写がすごく正確で質感までありありと想像できるのが すごいと思った。2017/07/15
きいろ
7
拳銃を巡る短編。芯から悪い人間が出てこないので安心して読める。2013/10/26