出版社内容情報
裸一貫からニューヨークを陰で支配する実力者となった“ダッチ・シュルツ”に憧れ、ギャングへの道と人生を学んでゆく少年ビリー
内容説明
野球選手でも、映画スターでもなく、ギャングのように世界を支配したい。1920~30年代にニューヨークに君臨した実在のギャングのボス“ダッチ・シュルツ”の懐に入りこんだ少年は、そこで学んだ。悪と人情、打算と誇りつまり人生そのものを。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
26
反社の使い走りで誇りを持つような少年なんて嫌悪しかないが、フィクションならどうか。実在のギャング、ダッチ・シュルツをスターの如く崇め、その世界に飛び込んだ少年が見たものとは? まやかしの魅惑、身の毛のよだつ凄惨な殺人、野心と恐怖。これがエンタメ的な展開もなく、フォークナーやクロード・シモンとも比較され得るような文体で長々と具体的に、細部を疎かにすることなく描かれゆく。裏で一体何が起こっているのか、読者には定かでなかったりするのだが、ミステリ要素もない。極めて抒情的に綴られたアメリカ犯罪史と言えようか。2021/12/29
KA
2
全米批評家協会賞を取ったE.L.ドクトロウによる1989年の小説。映画(1991年)は原作後半部をごっそり削ることにより、アダム・ケリーが提唱した「オブザーバー・ヒーロー・ナラティヴ」の形に近づく。小説は実際の歴史上の人物に基づいているという意味で、フィリップ・ロスの90年代三部作に近い。だけど、映画も小説も、一番雰囲気が似通っているのはジョナサン・レセム『マザーレス・ブルックリン』(1999/2019)だろう。特に映画版はブルース・ウィリスの登場と退場、絶対意識してるよねノートンが?2020/12/22