出版社内容情報
どうしたら彼女を"愛し負かす"ことができるか。タイの難民キャンプの保母として輝くように生きる修子と出会って、隆志は翔んだ
内容説明
人は結局は自分のために愛するのかもしれない。自分らしい自分のために、自分以外の誰にも愛しようのない相手を選んで―。池沢夏樹はじめての恋愛小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セシルの夕陽
50
芥川賞作家の恋愛小説。日本企業のエンジニア兼営業の野山隆志は、運命的な出会いをする。タイのカンボジア難民キャンプで働く、樫村修子…野山の会社が作ったエンジンを、難民のために寄付してほしいと。2人は恋に落ちたが、濃密な時は限られていた。本棚に長らく積読していた1991年の初版本。当時、池澤夏樹氏を推す友人に感化されて購入したのだと思うが、代表作でも、芥川賞受賞作でもない。ゆえに⁈登録者の少ないことったら😅 30年以上前の紛争が背景にあるが、男女間の葛藤は今と変わらない。タマリンドの実、食べてみたい。2025/04/27
Maumim
1
難民について語る中で「日本だって大きな地震で東京が崩壊して国の機能が麻痺したら、海に近いところに住んでいる人は、船で別の国へ逃げるかもしれない。流通機構が破壊されて食べるものが来なくなったら、どこかへ逃れる他ないですからね」って、まさに今そんな状況じゃないか。援助する側であった自分たちが援助される側にまわるという、想像もしてなかったこと。この小説のテーマはそれとは別のことだけど、援助する側から書かれている物語が、今はちょっと空々しくも感じたりする。2011/03/26