出版社内容情報
家督をゆずり隠居の身となった清左衛門の日記「残日録」。寂寥感にさいなまれつつ、命いとおしみ力尽す男の、残された日々を描く
内容説明
日残りて昏るるに未だ遠し―。家督をゆずり隠居となった元用人・清左衛門。世間から隔てられた寂寥感、老いた身を襲う悔恨。しかし、かつての執政府は紛糾の渦中にあった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
5
正職から自由職に移ろうかと云う時期に読んだ。この小説の主人公清左衛門は今で言うなら50代のかかりだろうか。寂寥感にさいなまれ、字通り人生のたそがれの心象がよく現れていた。筆者はこういった心の襞を描くにおいて実に巧み。主人公に乗り移っていたのではと思うほどに。「枯れて行く」と云うのは「惚けて行く」のではなく、生きてきた軌跡を畳んでいく作業・・男女の違いはあれども私は他人事のように読んでしまった。
freebird
4
藩の権力争いに係る様々な思惑を隠居した元用人の立場から大団円に導く話が、小話毎に独立しつつも複雑に絡み合う、名人らしい熟達した構成、文章力で読ませる本。藤沢周平は初めてですが、安心して物語を堪能できる本です。 絶対正義が必要とされず、穏便をもって上策とする案件には、今も昔も、渦中から一歩引いた御隠居然とした人物が、重宝されるのでしょう。 自然環境の厳しい東北の小藩で、生活の不自由無く、嫁にも淡い老いらくの恋にも恵まれ、引退してなお藩主にも頼りにされる人物の活躍に物足りなさを感じるのは自分が捻くれ者故か?2014/03/16
ヌーン
3
まず、国の名前がわからぬ 江戸ではなく、さりとて大阪など、大きなところでもない しかし、それなりに町はあり、侍も田舎田舎していない 読み取れなかっただけで示されていたのか そういうふわっとした設定のなかで、御城で殿様に仕えるものの中の派閥なんぞの騒動が語られているのである 役職も江戸とそう違わない 奉行所もある でも江戸じゃないのだ それなりに江戸からは遠そうなのだ なんなんだろ 読みながらずっとそのへんがわからなくて へんてこな感じでした 2024/11/17
温故知新
3
見事な連作短編15話。用人まで勤めた清左衛門の隠居後の日常を描く。15話の話を通じて、現代にも通じる色恋、友情、老い、権力闘争の話を織り交ぜる。友と酒を呑む場面に登場する酒のあては、酒呑みには堪らない。風景や季節の描写もいつもながら見事。じっくり味わいながら読みたい作品。2012/03/14
sumjin
3
藩主の信頼厚く長く用人を勤めたが、藩主の死去と同時に隠居。しかし、用人時代の人脈、働きぶりから様々な相談事が持ち込まれる。経験と知恵、時には昔鍛えた剣の技で難問を解決していく。中風で倒れた友を見て自らの老いを感じるが、杖にすがりながら必死に歩く姿に「人間は、与えられた命をいとおしみ、力を尽くして生き抜かねばならぬ」と教えられる。いくつになっても人の役に立てるということは尊いことだ。2011/12/22
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