出版社内容情報
限定された環境での、弱いものの心理は如何に展開するか?人間の内奥をとことんまで掘り下げた傑作を収録の著者デビュー作品集
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
27
☆☆☆☆ 文庫本に収録されていない「偽証の時」を読了。「死者の奢り」「飼育」「鳩」「奇妙な仕事」「人間の羊」「他人の足」もななめ読みして再確認。初期大江作品に共通する粘っこく、むんとした文体に強く惹かれた。細かい感情の揺れ、そして徒労の描写に、大江の天才性を感じる。この感性はすごい。2016/08/11
ナハチガル
17
『死者の奢り』と『奇妙な仕事』は設定や構造が似ているけれども、他の五作品はそれぞれこれほど違うかというほどシチュエーションが異なっていながら、閉塞感と徒労感、グロテスクさといかがわしさ、偽善と羞恥と人間の嫌らしさを執拗に描いている点でまごうかたなく一人の作家の作品集であることが如実に示されていて圧倒される。そして冒頭のくったくのない、颯爽とした著者の写真の笑顔との乖離にも驚かされる。稀有な作家だったのだと、改めて思う。「そうとも、俺たちは《物》だ。しかも、かなり精巧にできた完全な《物》だ」。A+。2023/06/28
akarick777
7
古本市で初版本を手に入れて、喜びました。そしてついに、読みました。すごい文章だった。死と隣り合わせの時代。大江氏自身もずいぶん酷い目にあってきたんだろうな。苦しくなるけど、もっと知りたいとも思う。圧倒的な読後感でした。2023/03/31
とりぞう
4
「僕は昨日の午後、アルコオル水槽に保存されている、解剖用體を處理する仕事のアルバイターを募集している掲示を見るとすぐ、醫學部の事務室へ出かけて行った」なんて話など。恥ずかしいはなし、ぼくは大学生になるまで(1984年)、大江健三郎を「ヒロシマ・ノート」の人だと思って、興味を持てずにいた。だけど友人の「好きな作家は大江健三郎」の言葉に影響され、結局大江健三郎を読みまくることとなった(レイン・ツリー以前まで)。彼のおかげでブレイクにはまることもできた。すごく好きな(除・後期)作家だ。2023/05/29
メトロ
2
この時期の大江健三郎の「徒労」を描いた小説は大好き。疲れきり、困ったことはこの後も続く。そしてそれはこの後どれくらい続くかわからない・・・。ああ、若さって泥の中を進んで行くことみたいだ。
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