出版社内容情報
鹿児島の片田舎で薩摩焼の名器を焼き続ける高麗貴族の末裔たち。彼らの数奇な運命と望郷の念とを詩情豊かに描いた表題作ほか二篇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さざなみ
3
13日に放送されたNHKの「鶴瓶の家族に乾杯」で登場された沈壽官という人に興味をもって詳しく知りたくなり、この本に辿り着いた。題名のとおりかたくなに守り続けてこられた朝鮮人としての誇りの経緯が短編であるが司馬遼太郎ワールドのムードで描かれる感動作でした。図書館の書庫で眠らされているのは忍び難い本だと思った。2020/07/17
お気楽になりたいお気楽さん
2
「故郷忘じがたく候」「斬殺」「胡桃に酒」の3作品を含む。読んでいて楽しくなるような内容ではなかったが、人間を考える上で参考になるかもしれない。「どうせ村に帰ってくれば一生茶碗屋をやれねばならぬ者が、せめて若いころだけでも茶碗と縁のないことをやって息をぬいておかねば、せっかくこの世にうまれてきたわが身が可哀そうすぎる」「息子を、ちゃわん屋にせえや」「政治というのは、九割までが弁解の巧拙にかかっている」「流言も、政治であった」☆☆☆2021/12/20
お気楽になりたいお気楽さん
0
(再読)なんとなく浪漫を感じられて表題作が良かった。昔、勝竜寺城の近くに住んでいたので「胡桃に酒」は身近に感じられた。「一番になるほかなか(中略)そうすればひとは別な目でみる、いじければむこうからかさにかかってくる、撥ねかえすほかなか」「事態を変質させる最大の力が時間というものであろう」☆☆☆2024/03/19
bibi‐nyan
0
時代、雰囲気がバラバラな3作品を収録。 小説としては足りないアイデアエッセイともとれる。読み応えはありました。 表題作。朝鮮出兵の際に薩摩に連れてこられた朝鮮人の里。彼らは苗代川という土地に根付き、当時現地に存在しなかった焼き物を、薩摩焼を今に伝える。筆者が沈壽官と会った際の記録。興味深い内容でした。 「斬殺」会津戦争直前、奥羽越列藩同盟成立時に政治に翻弄され暗殺された世良修蔵。当時の政治情勢の解説。 「胡桃に酒」細川ガラシャと忠興。ガラシャの運命は壮絶ですが、彼らを主とした小説には昇華できなかったか。2023/12/15