出版社内容情報
写実のギリシア・ローマと抽象のゲルマンが激突し、
キリスト教の見える化によりヨーロッパ美術が成立
欧州各国を訪れた著者が、美術作品の魅力を見たままに直截に語り尽くす
権威と来世信仰のエジプト美術
理想追及のギリシア美術と現実重視のローマ美術
抽象的かつ装飾的な非リアルのゲルマン美術
写実的にあらまほしき姿で再現したルネサンス美術
――明快な考察で提示される斬新な美術鑑賞術
中世において、西洋美術の本流ともいえる人間重視かつリアルを尊重したギリシア美術と、人間を描くことにあまり関心がなく抽象的かつ装飾的ないわば非リアルな表現を好んだと思われるゲルマン美術が激突し、この二つのモメントのハイブリッドの結果、キリスト教の神と教義を可視化(見える化)するものとして中世美術がつくられたと思う。それが十四~十六世紀のルネサンスでほぼ完成され、十七世紀のバロック美術や、十九世紀以降の現代につながる西洋美術は、宗教色の濃淡はあるにせよ、その延長線上にあると感じているからである。(「おわりに」)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
83
読み進めて驚いた。出版社名(文芸春秋企画出版部)が気になり調べてみたら自費出版でした。著者村上氏は日銀小樽、金沢支店長から民間の銀行などの役員を務められ後、70歳でサラリーマン生活を退役、その後本書を書き始めたとのこと。本書出版の’22年現在、御年85歳。本人曰くアマチュア西洋美術史家。60歳を過ぎてから、しばしば各地の遺跡や美術館を訪ね歩き、その印象を綴ったもの。エジプト美術に始まりギリシア美術、中世美術そしてルネッサンス美術まで。本書は通過点で、17Cバロック美術以降とくに19C美術の展開について⇒2024/11/08