出版社内容情報
広島と長崎でアメリカ軍が戦後行った「原爆の被害と効果」の大規模調査。残留放射線が計測され、科学者が人体への影響の可能性を指摘したにもかかわらずなぜ事実は隠蔽されたのか。2021年に放送後大反響を呼んだ「NHKスペシャル」に新情報を加え書籍化
内容説明
広島と長崎でアメリカ軍によって戦後行われた「原爆の被害と効果」の大規模調査。残留放射線が計測され、科学者たちが人体への影響の可能性を指摘したにもかかわらず、なぜ事実は隠蔽されたのか。2021年に放送され、放送文化基金賞奨励賞を受賞するなど大きな反響を呼んだNHKスペシャル「原爆初動調査 隠された真実」の内容に、NHK広島・福岡放送局の取材チームによる2年間の長期取材の成果を大幅に加筆し書籍化。戦後78年を経た現在も続く「核の時代」を考える上での必読書。
目次
序章 残された「原爆の謎」
第1章 「結論ありき」だったアメリカ軍の調査
第2章 研究対象の地区で明らかになった「異常値」
第3章 軍とメディアになきものとされた「残留放射線」
第4章 「忖度」は核開発のために
第5章 よみがえった広島・長崎の残留放射線の値
第6章 日本の原爆初動調査 苦闘する科学者たち
第7章 核科学者・レベンソールの極秘資料
第8章 相次いだ「原因不明の死」
第9章 「原因不明の死」は他の地区でも
第10章 「白血球の異常値」その痕跡をたどる
第11章 スパイを送り込んでいたソ連、謎の調査を追う
第12章 被ばくした駐留兵と「共犯者」となった科学者
第13章 七八年前の論理がもたらす核の脅威
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒデキ
44
私の知り合いでも、長崎で距離が離れていたために 被爆者に認定されなかった方がみえますが、 近所に住んでいた方で体調を崩された方が、かなりみえたそうですが、距離があるからと認められなかったそうです 残留放射線の考えがなかったらそうなりますよね アメリカの映画で核兵器を使ったあとですぐに人が入っていっても大丈夫に描かれているのもこんな考えに基づいていたんですね2023/10/08
マイケル
15
ヒロシマ原爆では有名な千羽鶴のサダコがいるが、ナガサキ原爆ではどうだったのか。当事者が亡くなっており遺族・関係者を探しての調査の大変さが伝わってくる良書。戦後何年もたってから白血病など原因不明で亡くなったナガサキ原爆被爆者が居た。しかし、GHQによる原爆関連の報道規制、残留放射能は無いとする米国政府の方針で調査結果は軍事機密として隠蔽。最近読んだ本「オッペンハイマーはなぜ死んだか(西岡昌紀著)」にも出ていたトリニティ実験爆心地訪問のオッペンハイマーにも触れている。原爆残留放射能の恐ろしさ。2023/09/29
CTC
15
8月のハヤカワ新書(6月に刊行開始)新刊。本書は21年夏に放映された同名の[NHKスペシャル]の内容に、取材班の2年に渡る取材成果を加筆したもの。広島が戦後早くから復興した事実は、フクシマの事態を楽観的に捉えたい場合に便利な知識だった。しかし事実はどうだったのか。米国は、奪う命より多くの命を救うから、という原爆使用肯定ロジックの下でも、さすがに化学兵器様の被害は隠したかった。今回明らかになった事に併せて、当該地域に疫学的な考察を加えたらば、更に重たい事実が見えてくるだろうけれど…。2023/09/24
coolflat
14
3頁。アメリカは広島・長崎で秘密裏に残留放射線を測定。極めて高い値を確認し、人体に影響を与える可能性に気づきながら科学者に圧力をかけ、その事実を隠蔽していった。一方でソ連もまた原爆の被害を矮小化する報告を行っていた。戦後、残留放射の存在から目を背け続け、アメリカとソ連は核兵器の開発を推し進めていく。しかし調査の理由や結果が最大の当事者である広島・長崎の被爆者に知らされることはなかった。残留放射線の隠蔽は国家だけが行ったものではない。科学者やメディア、そして国民をも巻き込みながら進められていったものである。2024/04/01
ロビン
1
きっとそうなんだろう、と思って読んだし、題名だってそうだし。帯にある目次からの「結論ありき」だの「忖度」だの、今の日本の現状と全く何もかも同じで、なんだかなあ、なんだかなあ、と読んでて無力感がわいてくる。NHKがこうやって、こんな番組作ってこんな本出したって。ああ、お願いだから、現在のことで頑張ってよ、マスコミさんよ、と思いながら読み終わった。2023/09/15