出版社内容情報
僕らで南洋植物専門の標本館を作らないか?――日本統治下の台湾。漱石を読み、端正な日本語を話す陳は、台湾生まれの日本人・琴司と共に植物学者を志した。だが養父母の期待を背負った陳は、意思とは裏腹に医学の道へ。琴司は台北帝大に進み、帝国委任統治領南洋群島への採集旅行に出掛けた。一方、自らの道に行くと決めた陳は、陸軍属の技師としてニューギニア探検へと向かう。波瀾の運命を生きる台湾人青年の大ロマン
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
TATA
40
葉山さん初読み。すごく重厚で読み応え抜群の作品。日本統治下の台湾を舞台にした二人の男性の壮絶な生き様。台湾で生まれた内地人と、複雑な生い立ちの本島人の二人。この二人の友情物語かなと思いつつ読むと、日本占領下の複雑な政治事情に翻弄された本島人の苦しみの日々がやたらと表に出てくる印象。舞台はそもそも違うけど「二つの祖国」を思い出しました。ちょっと後半に差し掛かったあたりで中弛み気味でしたがそれでも最後まで一気に読めました。良作、オススメです。2025/09/29
rosetta
27
★★★✮☆大正から戦後に渡るクロニクル。台湾生まれの日本人と、伝説的革命家の息子であり台湾財閥の養子になった本島人の友情物語。周りの期待に背を向け実用性のない植物学者の道をそれぞれ目指した二人だが、時代の波に翻弄され思いもしないし望みもしない人生を歩んでいく。この時代にはもっと悲惨な命の使い方をした人も多かっただろうからこの二人など恵まれた方ではあるが、現代の日本人には耐えきれないほどの圧力がかかりまくっている。NHKとかでドラマにしてほしいけど政治的に無理だろうなぁ2025/10/02
d2bookdd
25
壮大な一冊。モデルとなる方がいるなんて、本作はノンフィクションとして、台湾に関わる史実として伝承して行きたいですね。2025/09/14
千穂
22
日本統治下の台湾にて内地人の生田琴司と本島人、陳永豊。植物学者を志す2人が戦争の最中、運命に翻弄されながらも強く生きていく。早く戦争終わって〜と思い読み進めたが、終戦を迎えても真の終戦、心の安寧は中々訪れず。2025/10/25
katsukatsu
22
大正11年、台湾で、植民地官僚を父に持つ内地人(日本人)の生田琴司と本島人(台湾人)の富豪の家で育てられた陳永豊が出会います。そして2人を結び付けたのが南洋植物の研究でした。日本が統治する台湾は複雑に民族が入り交じり、そしてオランダ領だったインドネシアではさらに……。時代と様々な国の関係に翻弄される2人の姿を見ていると、どうか国境や国籍を超えて、自由に植物を研究できる日が訪れることを願わずにはいられませんでした。分厚い本の中に壮大なスケールの物語が展開していて、読み応え満点の一冊でした。2025/10/01




