出版社内容情報
妻と関係修復のためにシチリア島タオルミーナを訪れたメルヴィルは、レンタカーで宿に向かう途中「何か」に衝突する。事実から目を背け、最悪の選択を重ねる男の行く末は。陰気で、不穏で、スリリング……ジョルジュ・シムノンの後継者と名高い著者が放つ怪作
内容説明
妻の気持ちを取り戻すため、夫婦でシチリア島タオルミーナを訪れたメルヴィル。レンタカーでホテルに向かう途中、妻に海を見せようとするも無駄骨に終わり、そのうえ道を間違えホテルに辿り着けずにいた。妻の心は離れるばかり。土砂降りのなか未舗装の道を進み続けると、車が突然「なにか」にぶつかった。車を降りるな!何が起きたか、絶対に確かめたくない!メルヴィルは妻を説き伏せ車を走らせ続ける…妻との対話を避け、不都合な事実から目を背け、最悪の選択を重ねる男の行く末は―ゴンクール賞、ルノードー賞、フェミナ賞…名誉ある文学賞に次々とノミネート!フランスでカルト的人気を誇る鬼才が描く極上の文芸スリラー。
著者等紹介
加藤かおり[カトウカオリ]
フランス語翻訳家 国際基督教大学教養学部社会科学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
39
読み終えてから思わず唸り声を上げてしまった。率直に言うと感心と疑問、両方が込められた唸り声である。シンプルな筋立てに牽引力ある筆運び、これは見事だと言わざるを得ない。”カフカ的不条理劇”と言われれば、逃げ場のない悪夢感と現実の生々しさを強烈に意識させるあの結末にも味わい深さを覚える。しかし、フランスの名だたる文学賞(三大有名文学賞すべて)の候補に選ばれたと聞くと疑問符がつく。一体、この作品のどこがそこまで評価されたのか?と。間違いなく読ませるが同時にモヤモヤも残る奇妙な作品だった。他の人の感想を待ちたい。2025/04/11
練りようかん
19
タイトルと訳者きっかけ。ヴァカンスでシチリア島に着いた夫婦。人生の分岐を思わせる不穏、車内で感じた大きな衝撃。判断を狂わせたその前の判断が何だったのかが徐々に見えてくる遡り式スリラーだ。筋が通ってないよと言う夫こそ筋が通っておらず、夫は点で妻は線で考えるのが面白い。人はある地点まで行くと引き返すことはできない。幕引きの唐突感と皮肉が強烈だ。約150頁と短いのだけど、時系列の前後や言い争いの論点をずらしながら肝心なところをスッとばす絶妙なリアルが、この分量だからこその切れ味となって巧さを感じた作品だった。2025/06/10
石橋陽子
15
不穏で落とし所のないこの作風をなんと表現すればいいのだろう。不仲な夫婦が車でバカンスに出掛けるのだが、車内での会話はかなり冷えきった問答。何を言っても、あなた何言ってるの?今のこの状況分かってる?というように、抑揚もなく、上からくるし、相手も冷たくあしらう。夫婦こうなったらお終いだなと思う一方、誰かを轢いたかもしれない疑惑をなかなか確かめずうずうず。話しは進展しないが車は進む。大事なことには迂回。こういうのをノワール小説というのかな。謎に終わったがいつまでも心に残りそうな作品。2025/06/19
なつこうへい
2
微妙な仲の夫婦がレンタカーで旅行する。途中で何かにぶつかるが、そのまま運転続行。しかし、その後新聞で、ひき逃げ事件の記事を見つけ‥。お金でこんなに協力してくれるものなのか。次々と協力者が‥。果たしてどうなる。2025/06/15
Abercrombie
2
自分勝手でろくでもない奴ばかりの登場人物たちに、宙ぶらりんというより中途半端というべきストーリー。面白いとは思えなかった。2025/06/02