出版社内容情報
男性が死の間際に「御羊」に変身する一族に仕える「わたくし」はその肉を捌き血族に食べさせることを生業とするアンドロイド。ついに大旦那が御羊になったある日、「わたくし」は儀式の準備を進めるが、一族の者たちは「御羊」に対して複雑な思いを抱いていた
内容説明
男性が死の間際に「御羊」に変身する一族に仕える「わたくし」は、その肉を捌き血族に食べさせることを生業としている。ついに当代の大旦那様が御羊になった日、「わたくし」は儀式の準備を進めるが、一族の者たちは「御羊」に対して複雑な思いを抱いていた。かれらはなぜ、何代にもわたり血族の肉を食みつづけるのか。人間は/機械は、何のために存在するのか―第12回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞した異色の幻想SF。
著者等紹介
犬怪寅日子[イヌカイトラヒコ]
神奈川県小田原市出身。コミック『ガールズ・アット・ジ・エッジ』原作担当。本作で第12回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
258
静謐と無遠慮と闊達と頑固と悲壮と諦観が覆い被さり、こちらを覗き見ている様で御座います。ビートルズの楽曲で“Revolution 9”を御存知でしょうか。ジョン・レノン様は「100年は楽しめる曲だよ」といった趣旨の事を申されておいででした。恐らく初めて聴いた時の印象が最も重要では無いかと思う次第です。「ええ、ええ」この本、つまり本書はそんな印象で御座います。最初の家系図に面喰らいますが、主には日野様、大輝様、冬弥様、桃子様の御姉弟と御母堂の真昼様、それにAI執事だけですから御安心下さい。紙幅が尽きました。2025/11/01
yukaring
79
ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。とにかく異色、奇妙キテレツな物語。だけどどこか味があって引き込まれる「今朝、大旦那様が御羊になられた」から始まるストーリー。その一族は男性が死の間際に羊へと変身する。そして一族の皆はそれを祝いその肉を食す。その血肉を捌き、一族に食べさせる役割を担うのが主人公の「わたし」いつまでも少女の外見を持つアンドロイド。とにかく風変わりな一族の人々と羊に対する様々な想い。そして「わたし」は自問自答する、アンドロイドの在り方とは…。こんなシュールで変な小説を読んだのは久しぶりだった。2025/03/20
たいぱぱ
68
なんじゃあこりゃ!松田優作は血塗れの手を見て叫びましたが、僕は読み終わった本作を見て叫びました。このタイトルと表紙からは面白そうな匂いしかしなかったのに…。意味はわかるのに意味がわからん。つまり文章の意味は理解できるのだが、この作品の設定が理解できない。男性が死に際に「御羊」なる一族。それを生きたまま捌き食べる習わし。はい…?ハヤカワSFコンテスト大賞作なのに、選評者のあとがきが「最低点をつけた」とか「理解しきれてない」ってどうよ🤣。あまりにもぶっ飛んでるので、そのうち大傑作を産み出すかも…しれない。2025/08/28
いたろう
62
ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作ということだが、SFというより幻想文学のような小説。代々、一族の男性が死ぬ直前に羊の姿になり、一族の人間がその肉を食べるという世界観。牡羊でも雄羊でもなく、「御羊」と表記されるところに、一族にとっての、この羊の位置づけの重要性が見て取れる。そして小説は、この一族の一番若い子供たちから見て、祖父に当たる「大旦那様」が御羊になったところから始まる。語り手となるのは、代々の一族に仕えてきた、11歳の少女の姿をしたアンドロイド。御羊の肉を食べる儀式が進められる様子が、何とも幻惑的。2025/11/02
オフィーリア
54
凄かった...。死に際に御羊へと変わり、一族に食される男たち。この不思議な世界を見つめるアンドロイドの独特な語り口がどこか牧歌的な幻想世界へ誘う。私の語彙では伝え切れない、刺さる人には一生抜けない“何か”を残す、不思議で美しい読書体験でした。2025/07/31
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