出版社内容情報
夏の甲子園出場をかけた京都府大会決勝。木暮東工業のエース投手・権田至の投げたボールが、境風学園の強打者・仁科涼馬の頭部を直撃した。「あんな球、避けられるでしょ」少年はなぜそのような突き放した言葉を放ったのか? 鮮烈な京都青春物語。
内容説明
その夏の日、甲子園出場をかけた京都府大会決勝、球場は世界でいちばん熱かった。木暮東工業のエース・権田至の手から渾身のボールが放たれた。境風学園の強打者・仁科涼馬が打ち返そうと踏み込む、その時―白球が頭部を直撃した。球場の時が止まり、至の発した言葉だけが響いた。「あんな球、避けられるでしょ」なぜ、そんな言葉が少年から放たれたのか?至の言動に球審・鍋島は危険球退場を宣告、高校野球では異例のことだった。まもなく世間の至への非難が、炎上が始まる。だが大きな混乱の中、“被害者”であるはずの涼馬は意外な言葉を口にする。「あれは危険球ではなかった」と。伝わらない言葉のもどかしさの中で、本当に伝えたかったことのために真摯に闘う球児たちの姿を描き出す、熱く鮮烈な青春小説。第4回京都文学賞最優秀賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
174
京都文学賞最優秀賞受賞作ということで読みました。 若い作家かと思いきや、元銀行員で私より年上、人生経験豊富そうなので、デビュー作とは思えない巧さを感じました。 今後も期待出来そうです。 https://www.city.kyoto.lg.jp/bunshi/page/0000333285.html2024/12/02
いつでも母さん
134
1球のデッドボールを巡る物語。当てるつもりで投球などしない!だが。・・真実と見えてくる真相に、当事者二人よりもそこに関わった人間の深層心理が面白い。危険球退場を告げた審判や受けたキャッチャー、外野席から見守った補欠の友人、やっちゃいけない投稿をした先輩・・高3最後の夏、エースと4番バッターの対決と来たら自ずと盛り上がる。至と涼馬、君たちやっぱり言葉が足りないよ。出来過ぎ君過ぎる。2024/11/17
hiace9000
125
「青春&スポーツ小説」の範疇に収まりきらぬ人間ドラマ、堪能。京都文化を巧みな舞台装置に、甲子園予選京都府大会決勝での”危険球”というワンプレーと、そこに関わる人物それぞれが向き合った半年間を丁寧かつ誠実に紡ぎあげる。投手・権田と打者・仁科の葛藤を軸に、チームメイト、マネージャー、審判員、OBだれもの多様な人生、そこにある苦悩と陰と成長。茹だるような夏の京都と対を成す、凛然たる凍晴れの光差す冬の京都。その熱と温もりの絶妙の対比、言葉のもつ力への真摯な問いかけが、あらゆる世代の読者の胸に強く響く傑作である。2024/12/03
ma-bo
88
第4回京都文学賞受賞作との事。第1回〜3回の受賞作が気になるなぁ。夏の甲子園出場をかけた京都府大会決勝。木暮東工業の権田至の投げたボールが、境風学園の仁科涼馬の頭部を直撃した。「あんな球、避けられるでしょ」。審判は危険球退場を命じた。少年はなぜ突き放した言葉を放ったのか?デッドボールを巡るそれぞれの試練。事実は1つかもしれないが、それぞれの真実、真相は1つではない。当事者二人よりもそこに関わった人間の機微が丁寧に描かれる。そして半年後の決着。プロットや読みやすい文章だったけど思いのほかのめり込めず読了🧐2025/03/11
fwhd8325
69
一球の危険球から、そこに関係していた人たちを様々な角度から描くドラマです。早川さんだからではないですが、ややミステリがかった展開も面白かったです。私の世代では、どうしても熱血漢が登場しがちですが、彼らは冷めているのか淡々としていて、そこには少し物足りなさを感じてしまいます。2024/11/25