出版社内容情報
日本統治下の台湾で弾圧される先住民の青年。日本人に憧れる客家人の写真家。日本人村で育つ警察官の娘、月姫。彼らは何を願い、誰を愛したのか? 時を経て、月姫の娘の無弦琴子は期せずして亡母の足跡をたどる。史実と幻想を織り交ぜて描かれた傑作歴史小説
内容説明
険しい山々に抱かれた花蓮の町の近くで、あたしの級友の真子さんは原住民の青年ハロクに恋をしたのよ―日本統治下の東台湾で生まれ育った亡き母が、一人娘の琴子に語った古い恋物語。そのどこまでが真実だったのか?戦前の台湾と戦後の日本を生きる人々の歩む道と思いが交錯する幻惑に満ちた文芸長篇。
著者等紹介
池上貞子[イケガミサダコ]
跡見学園女子大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えりまき
17
2024(301)日本統治下の台湾で弾圧される先住民の青年。日本人に憧れる客家人の写真家。日本人村で育つ警察官の娘、月姫。月姫の娘の無弦琴子がたどる祖母・母の生きざま。史実と幻想を織り交ぜて描かれた歴史小説。2024/10/26
Ayana
4
数十年前に米国で開催された「Wearing Propaganda銃後織物展」に着想を得て書かれた物語だと思われる。日本から展示されたのは戦争柄の着物だ。調べてみて驚いた。戦闘機や敵国と戦う兵隊が描かれた着物のグロテスクさに。本書は一人の日本人女性が自分のルーツを探る物語。洋裁が得意な母は、日本統治下の台湾で生まれ育った。そして原住民の青年と恋に落ち、死ぬまでその人を思い続けた。時代を考えれば結ばれるはずもない。国家の論理とは対極にある個の運命が丁寧に描かれる。母の戦争柄の帯には一度も締めた形跡がなかった。2025/08/30
お抹茶
1
日本統治時代のアミ族の村でのできごと,そこに駐在した祖父母,その娘,孫娘による三代の物語。孫娘が自分の出自を辿るために花蓮に赴き,母や祖父母の時代の話が交錯する。日台間に横たわる暗い過去。題名が「風の前の塵」になる理由がよくわからなかった。2024/08/31
keichato
0
読んだ。難しくてなかなかしんどかった。 これが歴史小説と言われればそうなのかもしれないが、話が進んでいるんだかいないんだかという感じで、あったことや居た人についての説明につぐ説明で何ページも苦しんで、ようやくご褒美のように話が進むページがほんの数ページあって、また長ーい説明があって、と感じてしまい辛かった。本当はそうではないのかもしれないけど、私はそう感じてしまった。文章の美しさは好きだった。少し気を抜くと、いま誰の視点で描かれているのか迷子になる。この本を楽しめない自分がくやしい…。2025/03/31
ishida
0
日本統治下の台湾をめぐる物語。月姫がトリックスター的というかよくわからない…2024/10/26