出版社内容情報
2123年10月1日、九州の山奥の小さな家に1人住む、おしゃべりが大好きな「わたし」は、これまでの人生と家族について振り返るため、自己流で家族史を書き始める。それは約100年前、身体が永遠に老化しなくなる手術を受けるときに提案されたことだった
内容説明
2123年10月1日、九州の山奥の小さな家に1人住む、おしゃべりが大好きな「わたし」は、これまでの人生と家族について振り返るため、自己流で家族史を書き始める。それは約100年前、身体が永遠に老化しなくなる手術を受けるときに父親から提案されたことだった。かいていったらなっとくできるかな、わたしは人生をどうしようもなかったって。いやだったこと、いたかったこと、しあわせだったこと、あいしたこと、一生わすれたくないとねがったこと。老いない身体を手に入れた彼女の家族史。
著者等紹介
間宮改衣[マミヤカイ]
1992年、大分県大分市出身。本作で第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
446
ほとんどがひらがなの文体で描かれているので(ことに物語の終盤は)『アルジャーノンに花束を』を思わせる。物語の構想は、SFの形態をとってはいるが、本質はかならずしもそこにはない。語り手の「わたし」の圧倒的なまでの孤独と、自分自身にも理由のわからない疎外にこそ主題が求められるだろう。そのことは生きていることの意味の喪失と言い換えることもできるだろう。そうした「わたし」が持つ唯一つの生きていることのアイデンティティが「じんせいでたったひとつでいいから、わたしはまちがってなかったとおもうことをしたい」であった。2025/04/09
塩崎ツトム
200
授賞式のときにもらったガリ版、SFマガジン、そして単行本と計3回読んだ。読むたびに作品の解釈は微妙に変わるものだが、どれも「この作品はウエルベックの『ある島の可能性』と同じ地平に立っている作品じゃないか?」と考える。ただ、「ある島の~」を補助線にした語りはここには書かない。あと、3回目には第1回受賞作「みずは無間」と共通の実存問題について語っているのではないか、とも考えた。こちらとも別に語る気はないので、ぜひ両方読んで、比べてみそ。(つづく)2024/04/17
fwhd8325
181
不思議な作品です。SFはあまり好みではないのですが、紹介されている内容を見たら、面白そうだと思いました。ひらがなばかりの文章に戸惑いながらも、次第に引き込まれていきます。今までに読んだことのない世界観だと感じました。2024/08/07
やっちゃん
146
ホントにありそうな生活感のある近未来。未来の人から話を聞いているような。なによりそこまで生きられないことが寂しい。 SFのワクワクする感は無くて未来なのになぜかセピア色の無味乾燥なディストピア。忘れるのがいいのか忘れないのがいいか、これは難しい。2024/08/25
モルク
135
2123年家族史を書き始めたわたし。彼女は100年前からだが永遠に老化しなくなる機械と融合する手術を父の強い薦めで受けた。彼女が生まれてすぐ亡くなった母。年の離れた兄姉は彼女を恨み、母に似た彼女に父は執着する。彼女は25才のまま100年家族を次々と見送る。そして生まれたときから面倒を見、その後恋愛関係になる甥のシンちゃん亡きあと…。ほとんど平仮名の文字が綴る一人語りの文章が読みにくいが、彼女から感じる幼さ流れのまま生きるのをよく表している。そして地球が滅びようとしている今、選んだ道は…余韻が残る作品。2025/03/18