出版社内容情報
2123年10月1日、九州の山奥の小さな家に1人住む、おしゃべりが大好きな「わたし」は、これまでの人生と家族について振り返るため、自己流で家族史を書き始める。それは約100年前、身体が永遠に老化しなくなる手術を受けるときに提案されたことだった
内容説明
2123年10月1日、九州の山奥の小さな家に1人住む、おしゃべりが大好きな「わたし」は、これまでの人生と家族について振り返るため、自己流で家族史を書き始める。それは約100年前、身体が永遠に老化しなくなる手術を受けるときに父親から提案されたことだった。かいていったらなっとくできるかな、わたしは人生をどうしようもなかったって。いやだったこと、いたかったこと、しあわせだったこと、あいしたこと、一生わすれたくないとねがったこと。老いない身体を手に入れた彼女の家族史。
著者等紹介
間宮改衣[マミヤカイ]
1992年、大分県大分市出身。本作で第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナミのママ
79
読みやすそうなテーマだなと思ったら、とんでもなく響く作品だった。同じ本を続けて2回読む事は滅多にないがこれはパラパラと再読。ほぼひらがなで書かれているため流し読みできず、そのため深く入ってくる。2123年10月、九州の山奥に住む「わたし」は家族史を書き始める。おしゃべりが大好きなのにシンちゃんが死んでしまったから。ゆう合手じゅつを受け人間でなくなったわたし、2123年の日本の姿。脳と心と体、人間とは何?私は面白かったが好みが分かれそうな作品かな【第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞】受賞2024/03/12
はっせー
69
SFが読みたい人におすすめしたい本になっている!実は本書が発売される前から読みたいと思っていた。事前に読んだ書店員さんの評判がよく『アルジャーノンに花束を』を初めて読んだときと同じくらいの衝撃だと評していた。いざ読んでみるとなかなか似ている設定も多く楽しく読むことができた!おそらく本書は刺さる人にはめっちゃ刺さる本であり、万民向けではないだろう。それでもここまでの美しさと世界観を構成しているのはすごい。主人公のわたしは幸せだったか否かを語れる本だと思う!2024/03/20
aquamarine
57
どこか違う地球での2123年。100年前に融合手術を受けて永遠に老化しなくなったわたしは、これまでの人生と家族を振り返る家族史を書き始める。ひらがなメインでびっしりと埋まる文字は、予想に反しとても読みやすくあっという間に物語に取り込まれた。手術を受けるまで、受けた後の父親、兄弟…理不尽で腹立たしくて「わたし」を思って悔しくてぼろぼろ泣いた。わたしはどうしようもなかった?物語の最後に彼女が感じたこと、選ぶことに心臓を掴まれ、息を止める。案外こんな選択をしなくてはならない未来はすぐそこにあるのかもしれない。2024/04/05
小太郎
50
読み終わったのが夜中の12時頃で、普通なら眠くなるんだけど眼が冴えて秘蔵のウヰスキーを呑みながらこの本の事を考えていました。話自体は近未来に人体改造によって永遠の命をを持った主人公が語る家族史です。平仮名が多くて読み辛いのですがこんな風に引き摺る読書は久しぶりでした。人間の存在の根本に関わる洞察って普通はあまりしないのだけれど稀に優れた本に出合うと人間って一体何?という事を考えてしまいます。そういう本に久しぶりに出会えたのは実はとても素敵な事だったんだとちょっと得した気持ちになりました。★52024/03/17
よつば🍀
48
第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作品。頁を捲ると、ひらがなでびっしりと埋められた文章、読点も殆どない。更に苦手なSFという事もあり、最後まで読みきれるか一抹の不安が過ったが、読み進めるうちに、名前のない「わたし」の語りに惹き込まれた。融合手術を受け、身体のほぼ全てがマシン化され、永遠に老化しないテクノロジーで25歳のまま100年生き続ける「わたし」。SF設定でありながら、語られるのは、生きていく上で経験する幸不幸、愛情と搾取など人間に寄り添った内容だ。哲学的な読み心地だが、私は人間賛歌だと感じた。2024/04/08