出版社内容情報
1974年、ユダヤ人の文化人類学者アランと医師バーネイズは、〈生命の泉〉計画に関与したナチスの生物学者マウラーをブラジルのジャングルに追う。やがて日系人青年タテイシとアランは奇怪な刺青の少女を目撃する。マジックリアリズム×バイオテクノロジーSF
内容説明
1973年、ブラジル西部のマット・グロッソ州。無慈悲な人体実験に関与したナチスの生物学者ヨシアス・マウラーを追跡するべく、当地へと赴いたユダヤ人の文化人類学者アラン・スナプスタインと医師のベン・バーネイズは、先の大戦での祖国敗北を否認する日本人移民・通称“カチグミ”の残党を追う日系人青年ヒデキ・ジョアン・タテイシと行動を共にすることになった。旅の果ての月夜、アランとタテイシは奇怪な刺青の少女を目撃するが、それは生命と精霊が二重写しとなる、濃密にして猥雑な世界との遭遇だった―アマゾンに奇怪な陰謀劇を構築する、バイオテクノロジーSF×幻想文学。第10回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作。
著者等紹介
塩崎ツトム[シオザキツトム]
1988年、埼玉県川越市生まれ。県立川越高校、明治大学農学部卒。2022年、『ダイダロス』で第10回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rosetta
29
★★✮☆☆第10回ハヤカワSFコンテスト特別賞。大賞の『標本作家』の時にも思ったけれどこんなつまらない本を読了した自分の根性を褒めてやりたい。せっかくの美味しい素材を腕の悪い料理人が台無しにしてしまったような小説。1970年代のアマゾン密林奥地の秘密基地、ナチスの残党、人間とのキメラ、カチグミ日本人、スパイ。いくらでも面白くなりそうなのに致命的にリーダビリティが悪い。下手くそな翻訳文並に何を言っているのか伝わってこない箇所が多くて、文章の上を視線が滑る。ハヤカワSFの信頼度は自分の中で地に落ちたわ。2023/04/18
サケ太
26
個人的に良い作品だった。人類学者、ナチハンター、在米日本人「カチグミ」たち。ブラジルのジャングルに建設されたナチス残党の造った研究所を舞台に繰り広げられる悲喜劇。回想を交えて語られる物語は、ゆっくりなようでいて最後の展開に至るまでをしっかりと組み上げていた印象。エンタメ作品として面白い。2023/02/26
いちろく
23
「広義のSF」はジャンルの枠を拡げた魅力もあるのでは? 特別賞受賞作で刊行された本書。募集要項と各審査員の選評も添付されており、SFかどうか? という議論も論点の一つになっていて驚く。1970年代の南米を舞台にした独特な世界観は、巻末の参考文献の膨大な量をはじめ構築するに至る著者の苦労の一端が読む側にも滲み出る感覚だった。陰謀論をはじめとする現代にも通じるテーマを含め、虚実混合の物語をページを捲りながら受け入れた。正直、世界観に慣れるのに多少時間を要したけれど、私もこの作品が「広義のSF」だと思う一人。 2024/04/27
Mc6ρ助
22
『選択肢のない人間は自分を守るため、都合のいい物語に、易々と飛びつく。嘘というのは重ね塗りを繰り返した末に破綻するが、相手が嘘を求めているのなら、嘘は、重ねるほど強度を増す。(p289)』本当に「望月の欠けたることもなしと思へば」だったみたいな安倍さんのなんちゃってコクソウ(ギ)を支持した人びととして(ナチや大日本帝国の行為を支持したとなじられるがごとく)将来の人びとにカウントされる悪夢を見た気分を味わう不気味な読み心地、ハヤカワSF大賞選評のセンスオブワンダー不足は爺さまには当たらない怪作いや快作。2023/06/04
宇宙猫
19
★★★ アマゾンの奥地にある、ナチと日本人移民<カチグミ>の残党の怪しい研究所にまつわる話。SFコンテストの選評に面白いとあって読んだけど、最後まで退屈だった。文章のせいか、説明に詰め込み過ぎか、人類学者&ナチハンター視点と異型の男視点の交錯が上手くいっていないのか、雰囲気はあるけど惹きつけられるものがなかったな。2023/10/27
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