出版社内容情報
西暦八十万二七〇〇年。人類滅亡後、高等知的生命体「玲伎種」は人類の文化を研究するため、収容施設「終古の人籃」で標本化した数多の作家たちに小説を執筆させ続けていた。不老不死の肉体と願いを一つ叶えることを見返りとして--人類未踏の仮想文学史SF
内容説明
西暦80万2700年。人類滅亡後、その文化を研究するため、高等知的生命体「玲伎種」に再生された作家たちは、収容施設(終古の人籃)で永遠に小説を執筆し続けていた。史上最も多くの小説を創作した作家、吸血鬼・人造人間・狼男の全てを産み出した作家、生涯を通じて美と苦悩について探求し続けた作家―彼らに与えられた報酬は不老不死の肉体と、願いを一つだけ叶えること。自己の作風と才能を他者と混淆させながら共著する作家たちに対して、巡稿者メアリ・カヴァンは、ささやかな、しかし重大な反逆を試みた―「やめませんか?あなたひとりで書いたほうが、良いものができると思います」
著者等紹介
小川楽喜[オガワラクヨシ]
1978年生まれ。元グループSNE所属。2022年、『標本作家』で第10回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rosetta
39
★★☆☆☆第10回ハヤカワSFコンテスト大賞。時間を返せとまでは言わないが読む必要のなかった本。読了した自分を褒めてやりたいし、この本を奨めたい人も思い浮かばない。ハヤカワに拾われるまでに他の新人賞で三回、一次選考にすら引っかからなかったのも当然と思う。エンタメ要素を薄く被せてあるけど中身は小説を書く人間の苦悩を扱ったバリバリのジュンブンガク。自分をフィクションの登場人物にした作家とか、生まれなかった子供と話す作家とか、意味分からんし理解出来ん、ろくに説明もないし。SFを期待して読むと大ハズレ。2023/03/25
よっち
36
西暦80万2700年、人類滅亡後の地球。支配者である高等知的生命体「玲伎種」と、蘇生させて小説を執筆させる歴史上の名だたる文豪たちの交渉役である〈巡稿者〉メアリ・カヴァンが、ささやかで重大な反逆を試みるSF小説。生まれた場所も時代も違う作家たちの凝縮された人生。そして数万年も歪んだ共著を強いられ続けて、次第に才能を枯渇させてゆく作家たちの狂気。壮大なスケールで積み重ねられてゆく描写の中で、作家にとって小説や創作とは何か、本質を問い続ける展開は圧巻でしたが、理解できたのかと言われると考えてしまう作品です…。2023/03/09
ちょき
31
遠未来。私自身未経験かつ前人未到の小説。人類滅亡後、玲伎種と呼ばれる知性体に不死固定化処理により蘇らされた作家たち。彼らは終古の人籃に集められ、異才混淆という合作機能により小説を書いている。緻密すぎる設定と極めて高い文学性、発想の新奇性もさることながら、壮大なストーリーをブレることなくまとめている。最初から最後まで世界観に圧倒されながら読んだが、壮大すぎて読み手が感じるところも様々ではなかろうか。私は、私が何者か、人類の滅亡するのはいつかを想起しながら読んだ。初作がこのスケールとは、桁違いな作家の誕生だ。2023/03/04
みなみ
28
西暦80万2700年、人類滅亡後の地球で、高等知的生命体「玲伎種」が人類の文化を研究するため、歴史上の文豪を不老不死として蘇生させて、小説を執筆させているというSF。設定に興味を持って読んだものの、物語に起伏が少なくて、哲学書を読んでいるような気持ちになった。作家の心中や読者との関係性について考えさせられる。2025/04/05
mayumi
25
ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。西暦80万2700年。人類滅亡の地球。異種族に再生された歴史上の文豪たちは永遠に小説を書かされていた…というストーリー。文豪が蘇る、その発想は読書好きにはたまらなく魅力的。でも、この作品はそれよりも一人の女性の内面の葛藤・渇望が描かれていて、SFというより哲学的。作者の自己満足な部分が大きく、読んでいて疲れてしまった。あと、どうして文豪の実名を使わないのか。実名で出てくる人もいるのに。なお、その作家の作品を読んでいるか否かで面白さも変わってくると思うわ。2023/03/25