出版社内容情報
中学教師の十和子は自分に似ていたという女性教師が14年前に殺された事件に興味をもつ。彼女は自分と同じアセクシャル(無性愛者)かもしれないと……一方、街では殺人鬼・八木沼がまた一人犠牲者を解体していた。二人の運命が交錯するとき、驚愕の真実が!
内容説明
聖ヨアキム学院中等部に赴任した英語教師の鹿原十和子は、自分に似ていたという教師・戸川更紗が14年前、学院で何者かに殺害された事件に興味をもつ。更紗は自分と同じアセクシュアル(無性愛者)かもしれないと。一方、街では殺人鬼・八木沼武史が、また一人犠牲者を解体していた。八木沼は亡くなった更紗にいまだ異常な執着をもっている。そして彼の5番目の獲物は、十和子が担任する生徒の母親だった…十和子と八木沼、二人の運命が交錯するとき、驚愕の真実が!映画「死刑にいたる病」の原作者が放つ傑作シリアルキラー・サスペンス。
著者等紹介
櫛木理宇[クシキリウ]
1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、『赤と白』で第25回小説すばる新人賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
201
生れついての人殺しと自負している八木沼。だが、罪人は彼だけじゃなかったーあの瞬間、おれはあいつだった。キャー!もうね、怪しい人間ばかりで単純な私はどんどん混乱して翻弄されてしまう。本作は犯人探しもさることながら、背景に考えさせられる。夫婦、親子、教師、生徒・・歪なのだ。ここでも母親の存在がしがらみとなって囚われる人間が多すぎて苦い。アセクシャルとか性的指向など、生きづらい世の中にスポットを当てた櫛木さんの新作は色んな意味でやっぱり櫛木ワールドだった。それにしても十和子の新しいニックネームが気になるなぁ。2022/06/01
モルク
161
カトリックの私学中等部に赴任した鹿原十和子。そこでは14年前に女性教師殺人事件があったが未だ犯人はわからない。十和子はその被害者更紗に似ていると言われる。脅迫状、チェインメール…十和子の過去、現在は知られているのか。更紗の夫、同僚たち、神父、保健室登校の問題児…敵か味方か。性的マイノリティ、毒親、ネグレクト…様々な重い問題が盛り込まれている。ちょっと詰めこみすぎの感があり、そこがむしろ読みにくさに繋がる。でも、著者得意のシリアルキラーは見事!最後に強くなり母と向き合うことができた十和子には拍手。2022/10/05
みっちゃん
151
凄惨な殺人の描写はおぞましいこと、この上ない。巻頭の人物紹介から殺人鬼の名前は明らか、そして本人の独白も。が、その連続殺人には性的少数者の問題、毒親の存在が複雑に絡み合っていて、頁を捲る手は止まらない。終盤の「最後の殺人」で敢えなく主人公は…からの!驚いた!何と!全く想定外の真相、であった。2022/07/26
とん大西
141
読み友さん達のレビューをみてるとちょいと読むの躊躇いましたが…。歪みに歪みまくった八木沼の相次ぐ殺人。自らの性に悩み続ける教師・十和子の生き辛さ。カギとなるのは未だ犯人逮捕に至っていない14年前の戸川更紗殺人事件。八木沼の狂気のモノローグ、囁くようで諦めにも近い十和子の胸の裡。いったいどこでどうつながってどこに着地するのか。なかなかの読み応えでついつい一気読み。見えていた心象風景が始めと終わりでやや角度が違ってるのも巧み。終わってみれば最初のグロが中和されたかのようなすわりの良さ。2022/06/26
そら
107
冒頭から殺人犯がわかった上での物語。殺人方法はさすがのグロさでこの描写は櫛木さんらしさのひとつだ。ジェンダー問題や性的マイノリティのワードが満載で、様々な個性があるのだと改めて知る。殺人にも犯人なりの理由があり、仕掛けられたロジックは巧妙でぐいぐい読ませていく。思いもよらない結末。そこだけ読めば愛が溢れたヒーローに見えるが、いやいや、そんなわけはない!2022/08/24