セヘルが見なかった夜明け

電子版価格
¥2,090
  • 電子版あり
  • ポイントキャンペーン

セヘルが見なかった夜明け

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 46判/ページ数 144p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784152099327
  • NDC分類 929.573
  • Cコード C0097

出版社内容情報

刑務所の窓に巣をかけたスズメの夫婦、通勤中にデモに出くわした掃除婦、工場の同僚に恋心を寄せる女性、紛争地帯のレストランの店主……中東に暮らす人々の日々の営みと、彼らが情勢や伝統に翻弄される様を、トルコ政府に拘束中のクルド系政治家が描く短篇集

内容説明

工場の同僚に恋をし、デートに出かけた女性と、その家族の悲劇「セヘル」。刑務所の屋根に巣をかけた雀の妻の勇ましさと夫の情けなさをコミカルに描いた「我々の内なる男」。スポーツカーが大好きな掃除婦が通勤中にデモに出くわす「掃除婦ナっち」。一冊の傑作小説を通して、都会で暮らす娘が疎遠になっていた父の秘密に触れる「歴史の如き孤独」。中東の伝統的価値観や情勢に翻弄されながらも日々の生活を営み、夢や思い出を抱きつづける人びとの美しさを、政治犯として勾留中の著者が紡ぎだす短篇集。

著者等紹介

デミルタシュ,セラハッティン[デミルタシュ,セラハッティン] [Demirta〓,Selahattin]
1973年、トルコ・東アナトリアのエラズー出身。少数民族ザザにルーツを持つクルド系の政治家、作家。アンカラ大学卒業後フリーの法律家として働き、トルコ人権協会のメンバーとなる。平和民主党(BDP)の共同党首を務め、武装組織クルディスタン労働者党(PKK)とトルコ政府との紛争状態の和解に尽力したのち、人民民主党(HDP)に移籍。ここでも共同党首の1人となり、2014年には大統領選に出馬、当選は逃したものの同党は議席数を伸ばした。2016年11月、テロ教唆・支援の疑いで身柄を拘束され、2018年の大統領選には獄中から立候補した。現在も拘留中である

鈴木麻矢[スズキアヤ]
女子学院高等学校卒業、早稲田大学第一文学部卒業、イスタンブール大学大学院トルコ語学科修士課程修了、トルコ文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

362
著者のデミルタシュはザザ人※。原文はクルド語で書かれているのか、トルコ語かは不明。汎用性を考慮してトルコ語か。12篇のショートストーリーズから成るが、深層での通底性はともかく、一見したところではそれぞれが独立した手法で語られる。ことに心魅かれたのは3篇。まずは表題と関わる「セヘル」。不条理なまでに理不尽な物語だ。因習的なトルコの一つの側面だろう。続く「掃除婦ナっち」は、夜明けへと向かう覚醒の物語。「歴史の如き孤独」は、本書の核心を成す1篇。ここで語られる物語は、私たちの心に浸透し、静かな感動を呼び起こす。2022/10/17

どんぐり

94
夕方3人の男が森で盗んだセヘルの夢を、真夜中3人の男が空き地で奪う〈セヘル〉ほか全12篇。この表題作はイスラム圏の名誉殺人の問題を扱ったもので、男性親族が「これは俺たちの名誉の問題だ」として強姦被害にあった女性を殺害してしまう。なんとも理不尽な世界があるものである。本書の一篇一篇は短めであっというまに読むことができるが、内容は非常に濃い。著者はトルコの元大統領候補者のクルド人政治家で作家。現政府からテロ容疑で汚名を着せられ、いまも囚われの身にある。本書は、その獄中で執筆したもの。2022/03/21

とよぽん

65
「惨殺や暴行の犠牲になったすべての女性たちに捧ぐ」という扉の言葉、そしてトルコの大統領選挙に2度立候補した著者が政治犯として服役中の刑務所で執筆した作品、ということから、この短編集がどんな立ち位置で書かれたのか推し量ることができる。「セヘル」おぞましい名誉殺人の狂気に、そんな人権意識の世界があることに驚いた。「歴史の如き孤独」はとても深い内容を問いかけているようで、獄中の著者の強靭な精神力を感じた。セラハッテイン・デミルタシュ氏が自由の身になれる日が待たれる。2020/10/03

ヘラジカ

64
トルコ文学。服役中の政治家による掌編集。表題作「セヘル」は、ストレートに凄惨な因習を描いていて短いながらも鮮烈な印象を残す。むごたらしい犯罪として知識にはあったけれど、こうして物語の形式で読まされても胸が悪くなるのは変わらない。邦題も帯のコピーもかなりのネタバレなので、読み始めすぐに気づいて5ページ程度の短編なのに読むのが嫌になった。そんな感じで前半は厳しい作品が多めだが、後半は対照的な人間味に溢れた優しい作品が多い。「ああ、アスマン!」「母との清算」が好き。2020/04/02

seacalf

55
クルド系民族出身で、大統領選にも出馬し、現在は政治犯として服役中の政治家が、市井の人々を書いたというかなり異色の短編集。これだけでも食指が動くが、トルコというだけで気持ちの昂りがひと目盛り上がる。読みやすいくだけた文体であっという間に読めるが、内容は非常に鮮烈。今なお広く蔓延している土俗的風習を描く「セヘル 」は特に痛ましいが、『掃除婦ナっち』『にんぎょひめ』『黒い瞳によろしく』など貧困層の話が多い。もちろん物哀しさを感じるのだが、どこか郷愁も覚える。今度トルコに行く時はアナトリア地方にも足を伸ばしたい。2020/06/11

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/15442562
  • ご注意事項

最近チェックした商品