出版社内容情報
第5回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。これはサイバーパンクか未来予測か。24歳の現役東大院生が描く、2084年の都市SF。
内容説明
二〇八四年、人類が、植物の生理機能を演算に応用する技術“フロラ”を生み出した未来。東京は、二十三区全体を取り囲む環状緑地帯によって世界でも群を抜く計算資源都市となっていた。フロラ開発設計企業に勤める青年・砂山淵彦は、多摩川中流で発生したグリーンベルトの事故調査のなかで、天才植物学者・折口鶲と出逢う。首筋につける“角”―ウムヴェルトと呼ばれる装置を介してフロラの情報処理を脳に描出する淵彦は、鶲との仕事の最中に突如意識を失ってしまう。混濁する意識の中で思い出される、藤袴嗣実という少年と過ごした優しき日々。未来都市に生きる三人の若者たちを通して描かれる、植物と人類の新たなる共生のヴィジョンとは?二五歳の現役東大院生による、第五回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。
著者等紹介
津久井五月[ツクイイツキ]
1992年生まれ。栃木県那須町出身。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻に在籍。2017年、第4回日経「星新一賞」学生部門にて、「天使と重力」で準グランプリを獲得した。『コルヌトピア』で第5回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞し、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
132
まあまあ。植物を演算装置として使うことで都市と緑が融合を遂げた未来の物語。いちおう、事件は起きるのだけど世界が終わるとかそこまで壮大な感じにはならず、終始淡々と落ち着いた雰囲気の物語なので、エンタメとしておもろしいかというといまいちなんだけど、世界観の設定がおもしろいし、根底で問いかけている演算装置と人間の関係性のところは本格SFちっくな感じ。なかなか悩ましい。2021/06/27
ちょき
36
ハヤカワSFコンテストの大賞受賞作。冠に恥じないだけのクオリティーはある。2084年、人類は樹林を大規模な計算資源(フロラ)として利用できるようになっている。東京は巨大なグリーンベルトに囲まれているという設定。最大のレトリックは植物が人類から計画的に利用されながら実は人類を利用しようとしているってこと。一人戦いを挑むツムギ、主人公のアビーは角を介してフロラとレンダリングする。ヒロインヒタキとの22世紀的な恋愛の行く末も気になった。ストーリーは読み終わってみれば意外にまっすぐ。続編がありそうな予感するっす。2018/01/10
はじめさん
30
第5回ハヤカワSF大賞。フロラと呼ばれる植物を計算装置とする技術が確立された近未来。環状8号線を覆う無数の緑はグリーンベルトと呼ばれ、そこにある計算資源が消失。「角」というフロラとの接続端子を持つ青年と若き才媛が謎を追う。青年が過去に知り合った敏感な感性を持つ友人が鍵を握っているらしい。さぁ、このヤブをつついて出てくるものは鬼か蛇か。/ SFの面白さは設定で8割決するといっても過言ではないが、植物を張り巡らせれたものをネットワーク化とか、どっか研究してそうなリアルさ。ハードディスクとしても数百年もつしね。2018/02/18
信兵衛
28
人類へ課題を投げかけるSF作品と感じます。2017/12/16
宇宙猫
25
★★★ 植物を演算機能として利用できる近未来で、他人と同じように使えないために返って優秀な青年の話。アスペルガーみたいなものかと理解。緑の描写が生き生きとして迫ってくるのに人間が薄くて物足りない。伝えたいのは他人と違う苦悩?植物との共生?あいまいだな。2018/05/26
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