出版社内容情報
ドリームワークス映画化! 二十世紀初頭のオーストラリア。孤島に暮らす灯台守の夫婦は、ボートで漂着した赤ん坊を実子と偽って育てはじめる。心を揺さぶる愛と苦しみを描く世界的ベストセラー
内容説明
二十世紀初頭のオーストラリア。悲惨な戦争が終わり帰国したトム・シェアボーンは、灯台守となって孤島ヤヌス・ロックに赴任する。朗らかな妻イザベルを得た島での日々は平穏で幸せなものだった。しかし数年後のある日、ふたりの人生は根底から変わった。島に漂着したボートに、生後間もない赤ん坊が乗っていたのだ。死産の直後で悲しみに沈んでいたイザベルは赤ん坊に魅了され、本土に報告しようとするトムを説得し、実子として育てはじめる。ルーシーと名付けられた赤ん坊は健やかに成長し、ふたりに喜びをもたらすが…。絆が生みだす幸福と苦しみを描き上げた長篇小説。
著者等紹介
ステッドマン,M.L.[ステッドマン,M.L.] [Stedman,M.L.]
西オーストラリアで生まれ育つ。ロンドン在住。2012年『海を照らす光』でデビューし、有力紙誌に絶賛された
古屋美登里[フルヤミドリ]
早稲田大学教育学部卒、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
121
手を繋ぐ相手が悪魔だと認められない女。女に取りつく悪魔ごと受け止めようと決心する男。不幸に酔い女が吐くとき、私は女に罵声を浴びせる。「吐くな!自分の卑怯は自分で飲み込め!」。「私ばかりが何故こんなめにあうの」。醜い不遇感がどれだけの人間を不幸にしたのか。二度と取り戻せないその幸福を、奪われてしまった人たちの苦しみを思い知れ。灯台は迷う船を救うが足もとを照らさない。重苦しい読書のあと、私が何故希望を胸に抱けたのか。フランク、あなただ。回想でしか出てこないあなたの来し方が、怒りに惑う私の読書の灯台だった。2017/05/02
はる
89
非常に読み応えがありました。絶海の孤島で暮らす若い灯台守の夫婦。三度の流産を経験し悲しみに暮れていたが、ある日、島に赤ん坊を乗せた小舟が漂着する。二人は世間を欺き自分達の子供として育てるが、実の母親の存在が明らかになる…。理性と愛情の葛藤。深く切なく、倫理感が揺さぶられる物語です。夫婦と子供の運命はどうなるのか、ハラハラしながら読みました。おすすめです。2017/02/24
藤月はな(灯れ松明の火)
88
恋人同士でもあるマイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデル主演の映画原作。スザンネ・ビネ監督の『真夜中のゆりかご』、京極夏彦の『姑獲鳥の夏』でも母性故の芯の強さとそれ故のエゴの恐ろしさが描かれていたが、この物語でもそれを示すのがイザベルとハナである。イザベラは愛する人の子を何度も流産したという事からルーシーに執着し、ハナは夫との忘れ形見になった我が子が育て親を求めても自分の手元に置こうとする。その気持ちは身勝手ありながらも真摯で痛切だ。彼女らを愛していたからこそ、献身的なトムとグウェンに涙が溢れる2016/12/19
(C17H26O4)
69
「パッパ!」ルーシーがトムを呼ぶ声が耳から離れない。甘えて呼ぶ声も泣き叫ぶ声も。 愛が招いた悲劇としか言いようがない。イザベルの思考は狂気じみていると思う一方で分からないわけではない。イザベルの、トムの、ハナの、誰の苦しみもそれぞれに感じられる重い読書だった。なによりルーシーがかわいそうで。ルーシーが立派に大人になったことは奇跡に思えた。彼女に注がれたいくつもの愛を、彼女が理解し受け入れたということに安堵した。2019/04/19
ぶんこ
67
絶海の孤島の灯台守夫婦が3度目の流産で嘆き悲しんでいる丁度その時、ボートが漂流し、そこには既に亡くなっている男性と赤ちゃんが。当時の孤児院や孤児への過酷な環境を思って、イジーが自分の子として育てたかった気持ちがよく判ります。ただ実の母親が夫と子供の行方不明を嘆き、苦しんでいる事を知った時に、名乗り出なかったイジーの気持ちが切ない。また実の母であるハナが、亡き夫フランクの言葉「恨み続けるには、いつも嫌な事を覚えていなくてはならない。許しはいっときで済む」を思い出し、寛大な処置を望んでくれてホッとしました。2017/03/05