出版社内容情報
しだれ桜の下で発見された若き人形遣いの死体。その傍らには文楽人形が転がっていた。刑事の横田は??呪いの演目?≠フ再演と事件の関係を追う。伝統芸能の世界を舞台に描く異色のホラー・ミステリ
内容説明
若手文楽人形遣いの屋島達也は、師匠・吉村松涛のもとで充実した修業の日々をおくっていた。そんなある日、達也は怪しげな魅力を持つ花魁の文楽人形「桔梗」を見つける。桔梗は『しだれ桜恋心中』という演目専用に作られた、特別な人形らしい。だが、約60年前に『しだれ桜恋心中』が上演された際、技芸員が次々と不審死を遂げていたことを知り、達也は桔梗に近づくことを恐れはじめる。一方、補助金削減問題に揺れる日本文楽協会は、『しだれ桜恋心中』を呪いの演目として興行し、観客を呼びこもうとするが…。一つの演目に込められた想いが引き起こす悲劇を描いた、第4回アガサ・クリスティー賞受賞作。
著者等紹介
松浦千恵美[マツウラチエミ]
1965年東京都生まれ。音楽業界を経て、現在、大学職員。2014年、『しだれ桜恋心中』(『傀儡呪』改題)で、第4回アガサ・クリスティー賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
75
第4回アガサ・クリスティー賞受賞作。文楽の世界と共に語られるミステリーで、和の香りが漂います。怪しげな魅力を持つ美しい人形「桔梗」と『しだれ桜恋心中』が絡む不審な死。それが傀儡呪という人形を用いた呪いというのが何とも言えず幻想的な雰囲気を感じました。一つの演目と美しい人形が悲劇を引き起こすというのが物悲しさを見せていました。幻想ミステリーとして読めば面白い作品だと思います。2015/11/10
そうたそ
32
★★☆☆☆ 前回の受賞作が相当ストレートな正統派本格ミステリだったことに対して、今回はこのような異色の作品にその賞を与えたアガサ・クリスティー賞。正直言うと、決して面白いとはいえない作品だった。ミステリっぽくない第一印象からどう期待を裏切ってくれるのか楽しみに思いながら読んだのだが、読み終わった今でも結局どのあたりがどうミステリだったのかがいまいちよくわからない。ファンタジックな世界観の中にも、謎の解明のために現実に引き戻してくれる瞬間があるのかとも思ったがそうでもなく。発想は面白いんだろうけどねえ。2014/12/16
おかだ
30
う~ん、なんと言ってよいやら。文楽の世界を舞台にしたミステリーだと思っていたので、人形が動いたり喋ったりした地点であっ…てなった。ミステリー要素もあるけども、ホラーファンタジーとして入ったほうが違和感がなかったのかもなぁ。真相は予想外、というか色々予想外の事が起こるのでそれなりに楽しく読めた。余談だけど高校生の時一度だけ文楽を鑑賞する機会があったのだけど、開始数分ですこーんと爆睡した記憶が…今なら少しは魅力が分かるだろうか。観てみたい気がした。2017/05/11
MATHILDA&LEON
28
文楽の世界を軸に巻き起こるホラー的要素の含まれたミステリー小説。アガサクリスティ賞というよりもメフィスト賞とかで採用されるようなエッジの効いた作品だったように思う。人形が一人でに歩き出したり、人間のように笑ったり泣いたり、煙管まで吹かしたりするんだからビックリ。でも、花魁桔梗という人形は艶やかで美しく凛とした姿で、本当に活き活きとした描かれ方をしているので、不自然さは読んでいるうちに無くなった。人間の妬み嫉みが主軸だが、サブ的要素に『戦争』という無くならない記憶が描かれていたのが実に興味深かった。2015/06/16
凛
25
文楽の世界を舞台にして、桔梗という名の文楽人形と「しだれ桜恋心中」という呪われた演目にまつわる事件を描いたミステリー。ではあるものの、桔梗が動いたり喋ったりして、ホラーのようなファンタジーのような部分も。個人的にはもう少し桔梗の動きが目立たない方が面白かったのではないかと思う。確かに人形には魂が宿るというけれど、あまりにも桔梗が動きすぎて次第に人形というより人間のように見えてしまったのが少し残念。文楽というあまり触れることのない芸能の世界を垣間見ることができたことは良かったかな。そして、何より表紙が綺麗。2016/11/16