出版社内容情報
極寒の大地にあって唯一豊穣を享受する王国〈緑の凍土〉。王家の少年ディアスと姪のアンローサは、その豊かさを支える新たな角を巡る王家の権力争いに巻き込まれる。日本ファンタジイの新たな傑作登場
内容説明
かつて魔法使いが月を引き下ろして創った王国“緑の凍土”。極寒の地で唯一豊穣の恵みを享受するその国を支えるのは、伝説の鹿サルヴィの角。それが崩れるたび、王国は災厄に見舞われてきた。王子でありながら家臣に育てられた少年ディアスは、そこで王位継承争いとは無縁の穏やかな日々をおくっていた。しかし異母兄オブンの奸計により、突如故郷から追放されてしまう。同じ頃、姪であり幼馴染みのアンローサにも危機が迫っていた。角の崩壊に怯え、度重なる危機に疲弊した王国、そしてディアスとアンローサが窮地に立たされたとき、彼らの選択が未来を切り拓く―。
著者等紹介
乾石智子［イヌイシトモコ］
山形県生まれ、山形大学卒業。１９９９年教育総研ファンタジー大賞受賞。２０１１年に刊行された『夜の写本師』にはじまる『オーリエラントの魔道師』シリーズで注目を集めて以降、本格ファンタジイの担い手として活躍している（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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ひめありす＠灯れ松明の火
105
月光を浴びた新雪を更に濾過したらきっとこんな感じかしら。と能る限りの清らかさで言葉にしたくなってしまう、隅々まで純化された純粋なファンタジーでした。乾石さんの文章は何処か翻訳の様な硬質の、水晶みたいな美しさがあります。アンローサが遊牧民の暮らしの豊かさに驚く所が新鮮で愛らしい。自分が信じていた世界がいい意味で裏切られる瞬間の、自分の殻を破る感じ。それを一緒に感じました。表紙もとても素敵。瑠璃色から白へと織り成す少し寒々しい色合いだけれど、雪の結晶に手を伸ばす様に、躊躇いつつも触れたくなる魅力に満ちています2014/04/13
ちはや＠灯れ松明の火
89
生は死より生まれ出でやがては死へと還りゆく。満ち欠けをくり返す月が描きし円環は逃れ得ぬいのちの軛。竜を宿す赤金の魔法使いは永劫を求め、月を宿す白銀の聖獣は輪廻を誓った。凍土に生い茂る憩いの緑、北から吹く風は哀れみと豊穣の徴。国を護る貴き角がもたらす病、南からの風は哀しみと崩壊の兆。屍を喰らうことで繋がれていく解け得ぬいのちの鎖。赤金を受け継ぐ血肉の器と白銀の乳が育んだ魂、疎まれ陥れられようとも害われぬ輝きが闇に灯る。月は満ち夜を越え朝へ、海もまた満ちて冬を経て春へ、死から芽吹いた生は忘れ得ぬいのちの証。 2013/10/20
文庫フリーク＠灯れ松明の火
67
赤き海の底で、残骸と化しても生き延びた古き支配者・竜。その妄執とも言うべき力を宿し、魔法使いと化した男。三つ有る月の一つを引きずり降ろし、平坦な雪原の一部を月の力で台地と為す。二つめの月の力で凍土の一角に植物を繁茂させる。生まれる間際に天の理を乱された為、引きずり降ろされた月の力を宿した鹿の王者サルヴィ。最後の月を引きずり降ろす‐天地の理に反する行為を阻む為、新たに生まれた掟‐サルヴィ生きてある限り凍土は凍土のまま。故に赤金色の髪の男はナイフでサルヴィの命を断つ。命尽きるサルヴィの残した歌は我が角を→続2013/05/21
Yuna Ioki☆
58
1266-469-1 乾石智子作品初読み。ファンタジーは苦手なジャンルかもしれないと今更ながらに認識してしまった。。。。ちょっとお疲れ気味のせいもあり内容が頭に入ってこない。児童書なのかも？2015/11/03
爽
48
素晴らしいものをありがとうという気持ち。シリーズ化されていたら、もっと深まって楽しそうだなとも思う。オーリエラントの魔導師シリーズで好きになった作家さんだが、それ以外は読んだことがなかった。相変わらず描写が綺麗で緻密。サルヴィの駆けるところや赤き海での竜とのやりとりは特に躍動感がすごい。畳み掛けるように色々なことが起こって、でもそこにディアスの強さを感じて感動した。/ファンタジーを描く日本人作家でいちばん好き。魔法の深さを教えてくれる。2019/01/12
