出版社内容情報
信仰心が篤い父のもとに育った十歳の少女ジュディスは、ある日自分に魔法の力があるのではないかと信じるようになる。孤独で聡明な少女の悩みと苦しみを透徹した眼差しで描いた新鋭のデビュー作
内容説明
十歳のジュディスは、小さな町に、信仰に篤い父とふたりで暮らしている。学校でいじめられるジュディスの心のよりどころは、自分の部屋に作った模型の世界、「最も美しい土地」だった。ある日、ジュディスは「最も美しい土地」に雪を降らせた。次の日めざめると、窓の外は一面の銀世界だった。これは神の奇跡なのだろうか？しかし、それは数々の予想もしなかった災難をもたらして…。聡明で孤独な少女の闘いを繊細にあざやかに描き出したデビュー作。デズモンド・エリオット賞受賞。
著者等紹介
マクリーン，グレース［マクリーン，グレース］［ＭｃＣｌｅｅｎ，Ｇｒａｃｅ］
１９８１年に英国ウェールズに生まれる。オックスフォード大学を卒業後、ヨーク大学で修士号を取得。２０１２年に発表したデビュー作である『わたしが降らせた雪』は、有力紙誌に絶賛され、優れたデビュー小説に贈られるデズモンド・エリオット賞を受賞した。ロンドン在住
堀川志野舞［ホリカワシノブ］
横浜市立大学国際文化学部卒、英米文学翻訳家（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
88
今にも壊れそうな儚さを秘めていて、何処となく幻想の香りが漂います。いじめに悩む10歳の少女・ジュディスが起こした奇跡。それは自らが作った「最も美しい土地」に雪を降らしたことが現実になったこと。キリスト教を信じるジュディスは、この日を境に心の声を神様の声と感じ、声のままに従っていきます。その篤い信仰心が、どんどん状況を悪化させていくのが痛みとして刺さってきました。ジュディスの追い込まれて行く心が苦くて。純真で多感な少女にはこの世は残酷すぎたように感じました。それでも信仰を拠り所とするのが美しいです。2015/12/10
seimiya
15
原題は〈The Land of Decoration〉。ハルマゲドンの後にくるという〈最も美しい土地〉のこと。いじめに苦しむ10歳の少女ジュディスは、〈最も美しい土地〉を手作りし、雪という奇跡を起こす。いじめが待ち受ける恐怖の月曜日に起こした奇跡。ジュディスよりも、彼女の父親の苦悩が印象に残る。信仰の篤い大人ゆえに、父親ゆえに孤独な闘いを強いられる。怒りにかられている時こそ信仰は試されるのだ。読み終えた時に、サッと霧が晴れるように物語の構図が見えて感動した。タイトルは原題のままのほうが良いと思う。2015/01/26
鯖
11
読んでて辛かった…。エホバの証人だと思うんだけど、出産時に輸血を拒否し主人公を遺して亡くなった母。学校でのイジメ。父親ともしっくりゆかず、家も学校も住む街も閉鎖的で辛かった。描写がとても繊細で、美しくて、だからこそ辛かった。最後、一応、父親とは和解っぽく終わったけれども、まだまだ辛いことがありそうで…。彼女が子ども時代を何とかしのいで、早く時が過ぎて、大人になって、無事に広い世界へと出て行けますように。2013/12/05
星落秋風五丈原
10
最初にジュディスがThe Land of Decorationを作るシーンが旧約聖書の天地創造のようだ。彼女がずっと父親に訴えたかった事は願いが叶った事ではなく、自分が何に悩んでいるかということだった。ボタンの掛け違えでどんどん追い詰められていく父と娘。ジュディスの前に現れる神は彼女のもう一つの顔なのだろう。2014/04/08
ハルト
9
〈最も美しい土地〉と名付けられた模型。いじめられっ子な少女。そんなある日、彼女の願ったことが現実となる。奇跡。神様は少女の願いを聞き届けてくれた。深く宗教に心傾けた父親の活動。それによる疎外。奇跡は起こる。でも神様はなぜ助けてくれないのか。事態が過激になり、どんどんと少女が内面外面ともに追いつめられていくようすが息苦しいほどつらく痛々しい。犠牲、信仰、家族、神様、奇跡、救い、許し。多感な少女の純真さによってもたらされる答え。瑞々しくありながら不条理で残酷な世界。人との繋がり。多くの想いが胸に降りつもりまし2013/04/17
