出版社内容情報
二〇世紀初頭の大作家らに絶賛された奇書『ハドリアヌス七世』の著者コルヴォー男爵。知人からコルヴォーの著作を譲り受けた著者は、背徳にまみれたこの偽男爵の数奇な一生に迫る――実験的評伝
内容説明
文学史の闇に葬られた奇矯な天才作家の生涯に迫る。
目次
問題
糸口
紙上の攻撃
渋る弟
神学生
拒絶された司祭
ホリウェルの無宿者
奇妙な歴史家
年代記
聖なる友〔ほか〕
著者等紹介
シモンズ,A.J.A.[シモンズ,A.J.A.][Symons,A.J.A.]
イギリスの伝記作家、書誌学者。1900年8月16日生、1941年没
河村錠一郎[カワムラジョウイチロウ]
一橋大学言語社会研究科名誉教授。イギリス美術史専門。コルヴォー研究の日本での第一人者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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serene
3
『ハドリアヌス七世』 という傑作小説の著者であるフレデリック・ウィリアム・ロルフ(自称、コルヴォー男爵)の、小説家として才能に溢れた、しかし人間としてあまりにも大きな問題を抱えた半生の軌跡をたどった伝記。 まず、ロルフの作品を読んだことがなくとも、それらがいかに読者を魅了するものであるかが伝わってくる。 そして作品に魅了された人びとが引きも切らずロルフに接近し親しくなってゆくも、 彼のパラノイア気質(あるいは病気そのもの)による被害妄想と逆恨みによってほぼ確実に関係は破綻を迎える。 (つづく)2012/09/14
takao
1
忘れられた天才作家コルヴォー評伝。手がかりを求めていく様は、ミステリのよう。 2019/12/03
Izumi Matsuura
1
いや~びっくりした。1930年代に書かれたこんな評伝があったなんて。病的な嘘つきで、人格が完璧に破綻していて、誰と付き合ってもやがて決裂していまうのに、なぜか初対面の人を魅了し、詐欺師ゆえの文学的才能に恵まれ、一生他人にたかって生き抜いた奇人の生涯が、手紙や証言から少しずつ明らかにされていく。騙されたと思って読んでみてください。本当に面白いから。2012/09/08
jm
0
少し冗長。ミステリー風味のエンタメ作と思っていたら、かなり専門的で学術的な伝記。後で調べてみて100年前の作品と知って納得。コルヴォーの破綻ぶりは最初の数章で明らかなので、中盤以降は似たようなエピソードの繰り返しに思えて辛かったです。2020/11/25