内容説明
イタリアの製鋼所の町ピオンビーノ。そこに暮らす13歳のアンナとフランチェスカは、それぞれに異なった美しさを持つ、無二の親友同士だった。しかし、アンナが兄の友人に恋をしたことをきっかけとして、二人の友情は、少しずつすれちがっていく―閉塞的な社会のなかで懸命にもがき生きる若者たちの、刹那的な輝きを見事に描き上げた若き才能のデビュー作。カンピエッロ文学新人賞、フライアーノ文学賞、フレジェネ賞受賞作。
著者等紹介
アヴァッローネ,シルヴィア[アヴァッローネ,シルヴィア][Avallone,Silvia]
1984年、イタリアのビエッラ生まれ。ボローニャ大学卒業。若いころから雑誌で詩や短篇を発表。2010年に発表した初の長篇となる『鋼の夏』は、たちまちベストセラーとなり、イタリア最高の文学賞ストレーガ賞で次点となったほか、カンピエッロ文学新人賞、フライアーノ文学賞、フレジェネ賞を受賞。現在イタリアでもっとも注目を集める作家の一人である
荒瀬ゆみこ[アラセユミコ]
大阪外国語大学外国語学部イタリア語学科卒業、イタリア文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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umeko
6
なんとまぁ、13歳の少女とは思えぬ早熟さ。守りたいもの、変わりたい自分、壊したい社会。熱にうなされたような思春期の混沌が詰まった物語でした。大人への脱皮の苦しみやジレンマが、焼けついた鋼を素手で触るような強烈な刺激として伝わってきます。お見事!2011/11/09
新田新一
2
あまり読む機会のないイタリアの小説。貧困や麻薬が蔓延している南部イタリアの閉塞した社会で生きる二人の少女が主人公。作者は詩人でもあって、詩的で生き生きとした文章が心に響きます。二度と来ない十代を戸惑いながら生きる二人を作者は慈しみを持って描写。父親に束縛されること。同じ年代の男の子たちの不器用な性。綺麗な少女を食い物にする腐敗した社会。彼らが生きている社会を丸ごと描き出そうとする作者の意気込みに脱帽です。傷ついた二人が再会する最後の場面は泣けます。二人の友情が二人の青春の一番の輝きでした。2023/06/17
ハルト
2
二人の少女の、十三歳から十四歳という成熟と未成熟の間を揺れ動く年頃の、好奇心や葛藤や青臭さや不安定さをよく描いてある作品でした。性や家族や情緒面での焦燥感はすごい。イタリア地方都市の工業地帯の退廃的雰囲気も、市から苦情が来たのがわかるリアルさ。あと最後の落とし方にがつんとやられました。そうくるかと。ただいくつもの賞を受賞し、映画化も決まっている作品ではあるけれど、訳者あとがきにもあるように評価が分かれるのもわかる。めまぐるしく変わる視点や〜のように、を連用する文章は読みにくい。でも魅力のある作品でした。2011/11/12
dumpty
1
確かに評価の分かれるところ。途中で読むのをやめようかと思ったよ。私が気になったのは、視点の変化よりも思わせぶりな書き方。「ここだけ何でこんなに思わせぶりなん?はっきり書いてよ」というところが数か所。処女作ということですから、これからどんなふうになっていくのか楽しみではありますが・・・(ごっつい上から目線・笑)。2011/12/07