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内容説明
青い目で、天使のような顔をしたアラブ系の少年ユネス。彼は、身を寄せる伯父に降りかかった災厄のために、果樹園が立ち並ぶ美しい村リオ・サラドに移り住んだ。初めは新しい土地に馴染めなかったが、やがて、かけがえのない親友を得て、青春の日々を謳歌する。しかし、優美な少女エミリーの出現と高まる戦争の足音が、ユネスと友人たちの絆を引き裂く―歴史の闇に埋もれたアルジェリア戦争を背景にして、少年の成長と愛を流麗な筆致で描き上げる、フランスのベストセラー長篇。
著者等紹介
カドラ,ヤスミナ[カドラ,ヤスミナ][Khadra,Yasmina]
1955年生まれ。本名、ムハマド・ムルセフール。アルジェリア軍の将校時代、軍の検閲を逃れるため女性名のペンネームで執筆活動をはじめ、文学、ミステリと幅広いジャンルで次々と話題作を発表した。イラスムの声を伝える作家として、国際的に高い評価を得、作品は25カ国で翻訳されたが、2001年に自伝を発表し亡命するまでその正体は不明だった。2002年発表の『カブールの燕たち』は「サンフランシスコ・クロニクル」ブック・オブ・ザ・イヤーに選出
藤本優子[フジモトユウコ]
1964年東京生まれ、1987年パリ国立高等音楽院ピアノ科卒、翻訳家・通訳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
82
アルジェリア系作家の3作目。前二作がカブールの石打ち刑とイスラエルの自爆テロ。今回は1950年代のアルジェリアの独立戦争だ。アルジェリアの貧民窟から富裕層の伯父夫婦の養子になったアラブ人青年ユネス(ジョナス)が主人公の成長物語である。ヨーロッパ系コミュニティの友人と一人の女性への愛が描かれている。アラブの同胞が独立を勝ち取ろうと血を流しているなかで無関心な態度でいられるのか、友を失うことと祖国を失ことが問われ、歴史は大きく動いていく。ユネスの優柔不断な女性への態度は屈折していて、恋愛向きではない。→2021/09/23
柳瀬敬二
10
アルジェリアが舞台になっている小説は初めてだが、この本がずっとベストなままかもしれない。主人公ジュネスはアラブ人だが、裕福な伯父に引き取られたおかげで白人社会で育つ。田舎での青春時代は何不自由ない生活だったが、やがて絶世の美女の取り合いと独立戦争が友情を引き裂いていく。FLN、白人側、OASへと知人達が散っていく中で、運命というものがあると信じるジュネスだけは何の選択もしない。愛の場面においても。どうにもならないこと、ならなかったこと、世界が課すいわれのない不幸についての物語。2016/02/17
しろ
10
☆7 アルジェリア独立戦争を背景に、少年の一生を描いた総合小説。王道で面白く、まるで古典を読んでいるようでもあった。アラブ系の少年ユネスは、人種や宗教の違いに図らずとも苦労しながらも友情や恋を体験していく。そのあたりも瑞々しい青春もので、十分に堪能していたが、戦争が始まってからは様相が変わる。ユネスは、というよりアルジェリア人は、民族のために革命を起こした一部の仲間と、それまでを共に過ごした友達との板挟みにあう。ユネスの苦い恋とアルジェリアの苦悩は悲しかった。あとキーワード的にジダンを思い出した。2012/02/12
ぱせり
7
情勢不安なアルジェリアでずっと生きてきたユネス(ジョナス)。苦しみつつどっちつかずにみえた彼がそこにずっといつづけたことに彼の中にある芯の強さを思う。アラブ人でありアラブ人でなく、ランス人の友とみられ敵とみられ、ただ一人の女性を愛し古くからの友を思う彼がここにいる。腕を広げて帰ってこいと待っている。2018/11/17
yearning for peace
6
アルジェリアを舞台に、1930年代からアルジェリア独立戦争へと辿る過程で、その激流に翻弄された主人公ユネスとその仲間たち(シモン、ファブリス、ジャン)、彼らが熱を上げたエミリー。彼らはこの激動の時代のなかで、何を捨て何を得たのか。ある約束に束縛され、恋い焦がれたエミリーに、真実を打ち明けられない苦しさともどかしさが、後々まで周囲を巻き込んでしまう辺りとラストには胸を打たれました、。こういう大河的な時間の流れの中で、愛と友情を中心とした話が好きな私としては、非常に濃密な日々でした。2010/06/05
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