出版社内容情報
気が狂いそうなほど愛おしく、恐ろしいほどに切ない狂気と抒情の奇蹟的な邂逅を綴った幻想短篇。
内容説明
無人の改札口を出ると、そこはもう一面の猿だった―母への想いを猿の群れに昇華させた「猿駅」、とある村の儀式を通して白い肌の記憶を回想する「初恋」、そして知性化猿ショウちゃんと女子高生・静枝の逃避行を描く幻の未発表中篇「猿はあけぼの」まで十篇を収録。
著者等紹介
田中哲弥[タナカテツヤ]
1963年兵庫県生まれ。関西学院大学卒。1984年、「朝ごはんが食べたい」で星新一ショートショートコンテスト優秀賞を受賞後、吉本興業の台本作家などを経て、1993年『大久保町の決闘』で長篇デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
さっとる◎
40
これは素晴らしい、まさに想像力の文学。白昼のトリップ。だいたい何このタイトル、猿駅て(笑)。興味本意だけで足を踏み入れ、気が付けばもうズブズブの底なし沼にどっぷり浸かっていた。キテレツな発想が見せる異形の悪夢。グロくてエロくて滑稽なのに物悲しい。バカバカしいのに必死さがリアリティ。だからこそ恐ろしい。広がる一面の猿って光景が、俎に乗せられた初恋の人が、浴槽いっぱいの固まった鼻血で動けない男が、その発想が頭に降ってきた瞬間を想像して私はニヤニヤする。どれも良かったがラストの「猿はあけぼの」で泣いた(笑)2017/07/22
miroku
19
確かに初期筒井康隆を思わせる作風だが、スラップスティックによるカタルシスを目的としていない点が明らかに違う。しかし悪夢じみた作品ばかりなのに心に沁みるよなぁ・・・。2013/06/26
佐倉
15
母に会いに行くために猿で充満した町を進む『猿駅』蚊が殺されると暴走し周囲を滅多打ちにしてしまう男を描く『か』何気ない日常を描いているようで、壊れた精神が見せる夢であることを示唆する『雨』因習村的な奇祭をエロRTAみたいな『ハイマール祭』など、夢の中で暴走した言語野が読ませてくる小説のような雰囲気の作品ばかりで、実にたまらない一冊。特に『げろめさん』のお湯でふやけて烏賊みたいになったケータイが諦めきれず絞ってみたらげろめさんの吐いた味噌汁がぷるっと出てきた…という下りがお気に入り。何食べたら出てくるんだろ。2024/06/03
ぶんこ
10
最初の超短篇「猿駅」の半分、5ページ目でパス。 あまりなグロさにギブアップ。 図書館リサイクル本で、とても綺麗だったのがうなづけます。 読む人が少なかったか、読んでも数ページで止めた人が多かったのかもしれません。2014/08/29
猫のゆり
10
全編グロ切ねぇ!俎の上の少女も踏み潰される猿も鼻血で固められた話でさえ。この一冊で田中哲弥にはまりそう。マイベストはラストが爽やかな「猿はあけぼの」、妹への思いが切な過ぎる「か」、筒井康隆っぽい現と幻想の境目が崩れていく感覚がたまらない「雨」、「げろめさん」など。「ハイマール祭」や「羊山羊(『虚構機関』収録で既読)」のばかばかしさの中にも男の哀愁?(笑)みたいなのを感じさせる作品も好き。2009/05/30




