内容説明
あなたの目の前にこの世でもっとも危険な陥穽がが口を開いている。人生の断面を鋭く抉る六つの物語。
著者等紹介
モーリア,ダフネ・デュ[モーリア,ダフネデュ][Maurier,Daphne du]
1907‐1989。ロンドン生まれ。家庭で教育を受けて育ち、1931年、24歳で作家デビュー。1938年に代表作『レベッカ』を発表。同書および短篇の「鳥」がアルフレッド・ヒッチコック監督により映画化された
吉田誠一[ヨシダセイイチ]
1931‐1987。東京外国語大学卒業。英米文学翻訳家。ジョン・ディクスン・カー、ロイ・ヴィカーズ、ヒラリイ・ウォーらの作品などを翻訳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Panzer Leader
63
人生の曲がり角を間違ったような人達ばかりが登場する重い作品集。各主人公達に冷徹な目を注ぐ作者の底意地悪さが感じられてちょいと自分には合わなかった。2021/09/03
sin
46
よそで難しいステップを踏んだ後だからだろうか?古めかしくて時代の違いこそ意識させるものの読みやすい掌編だと感じた。作品は異色と銘打たれているが現代の感覚ではそれほど奇異なものには思えず深く人間という存在に対して考察したものと受け取れるのである。2014/05/06
みっぴー
37
読むと必ず嫌な気持ちになれる素晴らしい短篇集です。割りと彼女の作品は読んでいる方だと思うのですが、『皇女』のような政治色の強い作品は初めてで、お?っとなりました。ヨーロッパにある架空の国に革命が起こり、君主制から民主制に移行するまでのプロセスを辿った珍しい作品。『美少年』ー『ヴェニスに死す』のような、バカンス中に出会った美しい少年をストーキングする男性の話ですが、苦味渋味辛味がたっぷり盛り込まれています。『アリバイ』ー画家のふりをして二重生活、からの~なんでこうなった…本当に恐ろしい作家である。2017/10/02
たまご
31
一番恐ろしかったのは「皇女」でした.個人的には革命がなったあとの,大衆の心情がどのようなものだったのか,もっと描写して欲しいなあとおもいましたが,それは私の興味であって,この話はこれで過不足ないです. しかし,皮肉な,突き放した感じがいいですね….作者自身が登場人物を肯定していない感じが乾いてて,すごいです.2015/04/30
藤月はな(灯れ松明の火)
26
「アリバイ」は夢想が現実となって穏やかで退屈だった日々が崩壊していくラストが圧巻。「青いレンズ」の自分の正気が分からなくなる描写に酔いそうになります。「美少年」は自意識過剰で自分勝手に物事を見られない最低のロマンチストの主人公が「ベニスに死す」のアッシェンバッハみたいで好きませんでした。落ちぶれても「自業自得よ」としか思えません。「荒れ野」は信じ合えたと思ったらまやかしだったことが物悲しい。「あおがい」は人に尽くしてきた自分が不幸という女の独白だけど謙虚を装った図々しくて嫌味な女としか思えません。2012/10/24