タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代

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  • サイズ B6判/ページ数 386p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784152085177
  • NDC分類 289.3
  • Cコード C0098

内容説明

「タングステンこそ理想的な金属だ」と、その根拠を力説してくれたおじ、遍在する数の法則を語るおば、真摯に働く医師の両親、発狂してしまった兄。強烈な個性がぶつかりあう大家族にあって少年サックスが魅せられたのは、科学のなかでも、とりわけ不思議と驚異に満ちた化学の分野だった。手製の電池で点けた電球、自然を統べる秘密を元素の周期表に見いだしたときの興奮、原子が持つ複雑な構造ゆえの美しさなど、まさに目を見張るような毎日がそこには開けていた…だが、化学の魅力は、実験で見られる物質の激しい変化だけではない。キュリー夫妻ら、研究に生涯を捧げた人々の波瀾万丈のドラマもまた、彼にとってまばゆいばかりの光芒を放っていたのだ。敬慕の念とともに先人の業績を知るにつれ、世界の輝きはいっそう増してゆく。豊饒なる記憶を通じ、科学者としての原点と、「センス・オブ・ワンダー」の素晴らしさをあますところなく伝える珠玉のエッセイ。

目次

タングステンおじさん―金属との出会い
「三七番地」―私の原風景
疎開―恐怖の日々のなかで見つけた数の喜び
「理想的な金属」―素晴らしきタングステンとの絆
大衆に明かりを―タングステンおじさんの電球
輝安鉱の国―セメントのパンと鉱物のコレクション
趣味の化学―物質の華麗な変化を目撃する
悪臭と爆発と―実験に明け暮れた毎日
往診―医師の父との思い出
化学の言語―ヘリウムの詰まった気球に恋して〔ほか〕

著者等紹介

サックス,オリヴァー[サックス,オリヴァー][Sacks,Oliver]
1933年ロンドン生まれ。オックスフォード大学を卒業後、渡米する。脳神経科医として診療を行なうかたわら、精力的に著述活動を展開し、優れた医学エッセイを発表。鋭敏な洞察と人間への深い共感に支えられた語り口で多くの読者を魅了している

斉藤隆央[サイトウタカオ]
1967年生まれ。東京大学工学部工業化学科卒業。翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

DEE

10
タングステンのフィラメントを使った電球工場を営んでいたおじ。彼や、医師であった両親、そして年の離れた兄たちを通じて化学にのめり込んでいくサックス少年。 化学式を見ると頭痛がしてくる自分のような読者でも読み物として楽しめると思う。鉱物や光、生物など多岐にわたる好奇心がサックス少年に与えた影響は、脳神経科医になってからも活かされていたのだと思う。量子力学の登場により、自分が追い求めていた化学の神秘の限界に気付いてしまう。それで医師の道を進むことになるのだが、どっちに進んでも同じように大成したんじゃないかな。2021/06/17

ロピケ

4
大家族の中で育った著者は、祖父に始まる科学教育を、タングステンおじさんばかりか、沢山の親戚や家族(レンおばさんも素敵です)によって施され、子供時代を主に化学に費やしたと言える。戦争中の疎開など、つらい体験も無くはないけれど、過ぎ去った時代を美しく描写してもいて、ガス灯と点灯夫だけでも復活できないものだろうか…とうっとりもした。それにしても、当時の放射性元素の扱いは雑。それについての研究が進行中で危険性が今ほど理解されていなかったとはいえギョッとした。この本のお蔭で、この世界の成り立ちが大まかに掴めました。2013/03/25

shiro

3
化学のことは全く分からないだけに、新鮮な感覚で読めた。この本に出てくる鉱物や薬品の一つ一つを手に取って見てみたいし、その効能や変質を実感したい。疑問はどこにでも転がっているものだけど、それを持ち続け解明するには凄まじい情熱が必要なんだな。2014/08/21

カネコ

2
2014/02/28

amaneshino

2
実験の数々、歴史はもち面白い。…だが、一番心を揺さ振られたのは筆者が化学実験から離れた理由だった。『私をとりこにした化学は、十九世紀の、具体的で、博物学的で、観察にもとづく記述的な化学であって、量子の時代の新しい化学ではなかった。私の愛する化学は/どこかに行ってしまって/道の終点に行き着いてしまった気がしたのである。』筆者が一番幸運だったのは、科学に理解ある家庭でも、実験し放題の環境でもなく、化学に関して実験と理論の両軸がブンゼンらのように、見事に調和してた時代にほど近かったことじゃないだろうか?2010/10/19

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