内容説明
1945年4月30日、アドルフ・ヒトラーは総統官邸の地下室で自殺した。空からはアメリカ軍、地上からはソ連軍の猛攻を受けて第三帝国の都ベルリンは崩壊、長く続いたヨーロッパの戦争は終わりを告げた。数々の戦争報道で勇名を馳せたアメリカのジャーナリスト、ジェイク・ガイスマーは、特派員としてベルリンに帰ってきた。戦前にはCBSの駐在員としてベルリンで生活していたジェイクだったが、戦火に破壊され尽くした街は、まるで別世界のように見えた。建物は瓦礫と化し、回収されていない死体が腐臭を放ち、人々は生気を失っている。百戦錬磨のジャーナリストたちも言葉を失うような光景だった。ジェイクの目的は取材だけではなかった。この街のどこかに、彼女がいるはずだ。かつて愛したレーナが…高名な数学者エーミール・ブラントの妻だったレーナとジェイクは、戦前のベルリンで不倫関係を続けていた。だが、戦火が迫るころ、ジェイクは夫を捨てられないレーナを残し、ベルリンを去っていたのだ。戦争が終わった今なら、彼女を取り戻せるかもしれない。だが、ジェイクが発見したのはレーナではなかった。歴史的なポツダム会談の取材に赴いた彼は、そこで謎めいた米軍兵士の死体と遭遇する。事件の背景に興味を抱いたジェイクだが、行く手には占領下のベルリンの不気味な闇が広がっていた…。
著者等紹介
キャノン,ジョゼフ[キャノン,ジョゼフ][Kanon,Joseph]
1997年に、原爆開発のためのマンハッタン計画を背景にしたサスペンス大作『ロス・アラモス運命の閃光』で作家デビューをはたした。それ以前には30年以上にわたって出版社に勤務し、編集や経営に携わっていた経歴をもつ。同書はアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞を受賞するなど、最高級の評価を得ることに成功した。1998年にはいわゆる「プラハの春」を題材にした『スパイにされたスパイ』を発表。第三作にあたる『さらば、ベルリン』は終戦直後のベルリンを見事に再現して絶讃され、スティーヴン・ソダーバーグと人気俳優ジョージ・クルーニーが映画化権を獲得している。ニューヨーク市在住
渋谷正子[シブヤマサコ]
1957年生、早稲田大学第一文学部卒、英米文学翻訳家
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