内容説明
スーパーヒーローが独裁者から世界を救う!いとこ同士のジョー・カヴァリエとサミー・クレイは、『スーパーマン』の登場で黄金期を迎えたコミック業界で名をあげようと野心を抱き、究極のヒーロー“エスケーピスト”を生みだした。ナチスの魔手が迫ったプラハからここニューヨークへ逃れてきたジョーの体験を投影したエスケーピストはたちまちアメリカじゅうを席巻し、二人は頂点を極める。物語作家のサミーと、卓越した画才を持つジョーは、性格は違うが気も合う最強のコンビだった。しかし非情な戦争が強い絆で結ばれた二人を引き裂き、彼らを別々の運命へと導く…。野心的なふたりの青年の波瀾万丈な人生をパワフルに描くピュリッツァー賞受賞作。
著者等紹介
シェイボン,マイケル[シェイボン,マイケル][Chabon,Michael]
アメリカのワシントンDC生まれ。ピッツバーグ大学を卒業後、カリフォルニア大学のライターズ・ワークショップに学ぶ。1988年に長篇『ピッツバーグの秘密の夏』で華々しいデビューを飾り、一躍アメリカ文学界の寵児となった。1991年に短篇集『モデル・ワールド』を発表。1995年の長篇『ワンダー・ボーイズ』は好評を博し、映画化もされた。戦争、友情、親子の絆など深みのあるテーマを扱いながらもポップでユーモアあふれる語り口は定評がある
菊地よしみ[キクチヨシミ]
1951年生、東京大学文学部仏文科卒、英米仏文学翻訳家
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感想・レビュー
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まふ
101
第二次世界大戦前のニューヨークにおけるマンガ作家従兄弟同士の物語。ユダヤ人のサミー・クレイはチェコから亡命してきた従兄のジョー・カヴァリエとコンビでマンガを描き流行漫画家になる。ジョーは弟トミーの亡命を支援するが、その船はナチスドイツの攻撃で沈没する。怒ったジョーは打倒ナチスのため志願兵となって前線に送られるが九死に一生を得て帰国する…。米国のマンガ業界は「スーパーマン」で大ブレイクするが、その辺の状況がよくわかった。⇒2024/10/30
扉のこちら側
76
2016年364冊め。【180/G1000】ユダヤ人の少年(19歳)が亡命してニューヨークの従弟(17歳)宅にたどり着く。二人でコミックを描き、作中でヒトラーを懲らしめるヒーロー『エスケーピスト』で大成功。その裏には杉原千畝にビザを出してもらったのだろうリトアニア・日本経由でのプラハからの脱出の話、それに際してマジシャンの協力を得たこと、ナチスへの抵抗、そしてお金を稼いで残してきた家族を亡命させたいという思いがある。(続2016/05/28
NAO
63
30年から40年にかけてのアメリカコミック誌業界には才能あふれたユダヤ人が多かったという。そういった現実を踏まえて、ユダヤ人虐殺に揺れる東欧から脱出してきた若者が、アメリカで、残された家族のために奮闘するという話が考えられたのだろう。何とか無事にアメリカにたどり着いた自分は成功し大金持ちになったのに、故郷に残った家族は貧しく、常に命の危険にさらされ、そして、結局誰一人助からなかった。残されたジョーの贖罪の気持ちが復讐へと膨れ上がっていく様子は、あまりにも痛々しい。 2017/10/04
ゆーかり
13
ピューリッツァー賞受賞作。随分前にこの本を見た時は冒険ものエンターテイメントかと思っていた。1939年秋、迫害から逃れチェコからアメリカのに来たジョー。従弟のサミーと始めたコミック誌で生み出した‘エスケーピスト’は、ジョーのヨーロッパからの脱出、残してきた家族を一刻も早く救い出したいという思い、ドイツに対する戦いが込められている。伝説と思っていたゴーレム、象徴でもあり比喩でもあるのか。この版は海外読者のため著者自ら収縮したもので元はこの3倍程もある大長編らしい。[ガーディアン必読1000]2016/01/09
Porco
10
私には読みづらかったです。2021/10/17