父さんのからだを返して―父親を骨格標本にされたエスキモーの少年

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  • サイズ B6判/ページ数 357p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784152083654
  • NDC分類 316.8
  • Cコード C0023

内容説明

1897年、北極探検家ピアリーは、幾多の“手土産”とともにニューヨークに華々しく凱旋した。そのなかには、珍種動物同然の扱いを受けることになる6人のエスキモーがいた。彼らはニューヨーク自然史博物館の学者たちが追究する「人類学」のために連れて来られたのである。北極地方とはかけ離れた暑さと湿気に冒され、エスキモーたちは次々と倒れてゆく。ともに来た父に死なれたエスキモーの少年ミニックは異邦で孤児の身になってしまう。ある日、埋葬されたはずの父が、博物館で骨格標本として陳列されている姿を見つけたミニックは、遺骨を取り戻そうと、絶望に陥りそうになりながらも懸命に手を尽くすが…文明の傲慢さと無理解に翻弄され、肉親も故郷も失い、北極とアメリカという二つの世界に引き裂かれてしまった少年の彷徨を、20世紀初頭の探検熱と人類学のありようを批判的に俯瞰しながら描き出した衝撃の物語。ケヴィン・スペイシーによる序文・映画化。

目次

ピアリーの家来
鉄の山
アメリカ到着
ニューヨークで孤児になったエスキモー
アメリカ人ミニック
ウォレスの事件
詐欺
「涙の人生に運命づけられて」
父さんのからだを返して
科学のために
「とても哀れなミニックの遭遇」
「絶望的な流浪の境遇」
北極計画
逃亡
「破棄できない契約」
グリーンランドへの帰郷
ふたたびエスキモーとして
チューレ基地
ウイサーカッサク:大嘘つき
指名手配:生死を問わず
クロッカーランド探検隊
ふたたびブロードウェイに
北の国

著者等紹介

ハーパー,ケン[ハーパー,ケン][Harper,Kenn]
1945年カナダのオンタリオ州生まれ。長年にわたって、バフィン地方やグリーンランドのカーナークなど北極地方に住む。エスキモーの社会に深く関わりながら、教師、歴史家、言語学者、経営者として活動する。エスキモーの歴史と言語について研究を行ない、著作を発表している

鈴木主税[スズキチカラ]
1934年生まれ。翻訳グループ牧人舎代表。マンチェスター著『栄光と夢』で翻訳出版文化賞を受賞

小田切勝子[オダギリカツコ]
1962年生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。フリーの実務翻訳者を経て、牧人舎に参加
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

呉藍

8
惨い。惨いけど、普段の私たちは同じように動物を剥製にし、骨格標本にし、動物実験もしてるわけだ。モノ言う生き物かそうじゃないか、人間か人間じゃないか。「エスキモーの人々が同じ人間です」と理解したから惨い事件なわけで、「人間のためには仕方がない」とこれからも動物たちを惨たらしく殺していくんでしょうね。私たちは進化すればするほど、ただ孤独な存在になっていくんだと思います。2011/09/12

糸車

7
図書館でふと手に取り立ち読みで済まなくなり、一気に読み通した。イヌイットの少年にとって生まれ育った土地を離れることは想像したこともない怖い状況で、馴染みのない環境で珍しいものを見るように観察されるのは耐えがたいものだったと思う。追い打ちをかけるように亡くなった父が死んで故郷のお墓に埋葬されることもなく、標本として展示されているのを知ったときの衝撃はどれほどのものだったろう。でも、王墓のミイラを展示する博物館に行くわたしはどうなんだ?どこまでが文化研究?遺体には違いないのに。いろんなことを考えさせられた。2014/02/22

すけきよ

5
19世紀末、アメリカに連れてこられた6人のエスキモー。しかし、幼いミニックを残して結核で死んでしまう。葬儀したはずの父の骨格標本が博物館に展示されていることを知り……。あまりに哀れな物語。アメリカにもエスキモーの中にも自分のアイデンティティを見つけることができず、彼が最後に辿り着いた安息の地は……2009/04/21

nishioda

3
本の雑誌「海外ノンフィクションベスト」より、題名からして興味深い。人権とか心のケアとか、意識として無かった時代のこととはいえ、身勝手な人間が多くて唖然。北極圏からアメリカに連れてきたイヌイットの人生の物語でもある。墓まで辿った著者の力作。2022/03/16

リモモ

3
人類のとどまる事を知らない探求心。それによって物を知り人を知り未開地の発見や科学の発展があり、その恩恵を多分に受けてきた。その陰で犠牲になる人や物の事を深く考えたことがなかった。研究材料として連れてこられた異国の地で父や仲間を亡くし一人残される孤独。「絶望的な寂しさはともかく悲しみがどういう事か分かるだろうか。故郷へ帰りたいと切に願うのに希望は全くないと知るのがどういう事か」母語を忘れ進んだ文明・学問を知った身には生まれた土地ももはや心安らぐ故郷ではなくなる。始終感じる彼の寄る辺なさに心が苦しかった。2016/05/14

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