内容説明
フリーターのニコラは、ひょんなことから世界的大企業社長フレデリック・ドラモンのパーソナル・テイスターに雇われた。自分の好みを殺して相手の好みを我がものとしたニコラは、食事だけでなく、映画、書物など、あらゆる私的活動に関して味見役を担っていく。だが、次第に過激になっていくフレデリックの要求に応えきれなくなったニコラが彼のもとを去ったとき、恐ろしいことが…。人生の美食を追求する富豪。それを完璧にする試食家。二人がたどる奇妙で危険な関係。サイコティックでセンシュアルなサスペンス。2000年フランスコニャック国際ミステリー映画祭グランプリ/批評家賞受賞作品の原作。
著者等紹介
高橋利絵子[タカハシリエコ]
中央大学仏文学科卒、フランス文学翻訳者
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
匠
173
映画版を観てから読んだ。ある大企業の社長に雇われた「味見役」・・共有というより、相手のあらゆる好みを自分のものにしていく。そんなことまで?!とエスカレートしていくのだが、この共依存に似た狂気と偏愛はナルキッソス的。とても歪んではいるけれど、両者に対してちょっとわかってしまう部分も笑ってしまう部分もあり興味深く読めた。心理学的には同一視、同一化という感覚だと思う。そのあたり、もう少し社長の精神構造を具体的に掘り下げても良かった気がする。孤独の究極の果て、こんな壮絶な悲劇が待っている場合もあるのかもしれない。2014/12/23
藤月はな(灯れ松明の火)
30
大変、個人的にストレスが溜まる読書でした・・・。料理、セックスのための女、読書などを試してから主人、フレデリックに薦めるという「試食係」に抜擢されたニコラ。でもいくら、思考を同じにしようとしても絶食状態の相手に腐らせた食材で作った相手の好物を食べさせるのはアウトでした。それ以来、フレデリックのことが大嫌いになってしまって・・・。結局、フレデリックは自分で責任を負うのが厭なだけの臆病者に思えてなりません。ローラちゃんが可愛くてニコラとのやり取りにほのぼのとしていたのでイサべラさんの依頼に頷いていました。2015/01/21
いくら
30
大会社の社長フレデリックに<試食係>として雇われたニコラ。やがてフレデリックの要求は度を越して試食は食べ物だけにとどまらず。頭脳派なフレデリックは心理的にもニコラを掌握していき、要求がエスカレートしてくる様にのけぞるばかり。思ったより面白かった!2014/09/04
キキハル
24
この二人の関係はどこまでエスカレートするのだろう。どんな終着点が待っているのだろう。その興味で読み進めた一冊。大企業の社長フレデリックの試食係となったニコラ。最初は食事の試食だけだったのが次第に対象が拡大されてゆく。皮肉の利いたタイトル。閉塞感満載で終始息苦しかった。強制的に味覚を近づけるだけでなく、行動や思考まで相手に染まってしまうニコラが心配でやきもきした。互いに同一化し依存し支配する。狂気に捉われてしまった二人には最高の満足、まあ一種の愛と言えるのかもしれない。ちょっ甘やかなラストだったのが救いだ。2015/02/08
秋良
12
食べ物もセックスもスカイダイビングも、ぜんぶ「試食」させて結果を確かめる…いやいや無理でしょう。たとえ好みを似せたとしても、相手とはバックグラウンドも遺伝子も違うんだから。フレデリックもニコラも自己と他者の間には絶対の隔絶があるということが理解できないのかもしれない。こじらせてるなあ…2018/03/17