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儚い光

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  • サイズ B6判/ページ数 303p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784152083067
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

ナチスの殺戮を逃れた七歳の少年ヤーコプは、ギリシャ人地質学者アトスに救われ、二人はアトスの故郷の島へ逃げた。家族を虐殺されて心に深い傷を負った少年を、アトスは深い慈愛で守り、貧しいながら豊かな学問を授ける。戦後、二人はトロントは旅立ち、穏やかな日々が続く。過去の悪夢から逃れられぬヤーコプは、アトスが授けてくれた学問に救いを見出すようになる。そして、アトスのほか唯一の理解者となる妻にも巡り合った。そしていま、ヤーコプがついに得た人生の喜びは、多の者によって新たな意味を持とうとしていた…。世界25ヵ国で翻訳され、オレンジ小説賞ほか10賞を受賞した、珠玉の大作。生きることの意味を探し彷徨する魂を、流麗な文体で紡ぐ、世界的ベストセラー。

著者等紹介

マイクルズ,アン[Michaels,Anne]
1986年に上梓した詩集『The Weight of Oranges』でコモンウェルス賞を受賞。第2詩集『Miner’s Pond』(1991年)でカナダ作家協会賞を受賞、総督文学賞候補となった。初の長篇小説である『儚い光』は、オレンジ小説賞をはじめ、カナダ・アメリカ・イギリスで主要な文学賞を10賞も受賞し、本国カナダでは出版以来3年以上にわたってベストセラーにランクインした
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

83
ホロコーストから逃れたが、苦しみと絶望の中で殺された同胞への罪悪感、家族の喪失に苦しんでいたヤコープ。彼が埋もれる筈だった彼らの声を例え、時間としては遅すぎたとしても再び、掬い上げて行くまでとその継承についてが詩情溢れる端正な文章で綴られる。彼を保護するギリシャ人の名がアトスであるという事に安心感を覚える。そして考古学の聖三位一体を敬う彼が憤ったのが、ナチスがアーリア人の優位性を示すために発掘物の事実を改竄した事、ホロコーストを生き残った人々の疵とだからこその絆に対し、そこに入れない新世代の苦悩が苦い。2017/06/13

おさむ

39
カナダの女性詩人が描いた小説。戦争が人の心に与える深い傷と愛情による癒し、受け継がれていく歴史。英国のオレンジ賞等多くの賞をとっただけあり、詩的という表現がピッタリの文体で、読者をギリシア、カナダへと誘います。あとがきにもありますが、ユダヤ人迫害では「朗読者」、孤児体験では「悪童日記」を彷彿させます。2015/12/16

ヘラジカ

30
巷ではポスト・ホロコーストなるものがSFジャンルの言葉として使われているようだが、本来の意味で使うならこういう作品にこそ相応しいのだろう。件の大虐殺だけを描くのではなく、生き延びた側に残した特有の傷痕と、それによって生涯苦しみながら生きた者たちの闘いを描いている。時たま流れ込む切れ切れのフラッシュバックは苛烈ではあるが、現在の平穏のなかに語られる人々の良心に満ちた言葉は、じんわりと沁み入るように良い。装飾と比喩表現が溢れる詩的な文章が、軽くはないからこそ、深々と胸の内に根差すのだ。忘れえぬ名作である。2016/03/07

松本直哉

20
地質学者アトスが発掘作業中に、泥にまみれて身を隠す少年ヤーコプを発見する冒頭の場面が象徴的。地層を掘り、壊れやすく移ろいやすい過去の欠片を拾い集め、年代を同定して保存するとき、知ることになるのは、人間は廃墟と遺骸の折り重なった上に生きているということ、それを探し出すことではじめて死者を記憶することが可能になること、無味乾燥な歴史の事実と異なり、記憶とは道徳的な行為であり、死者の追悼にほかならないこと。それでも思い出すのはつらくて、主人公たちのように、泣きながらであっても分かち合う相手がいたことは僥倖だった2024/01/25

rinakko

19
よかった。亡命者となった少年の物語。いつか本当に癒える時があると到底思えないほどの深い傷を抱えて、それでも生き続けなくてはいけないのか…詮のない問いを呟きたくなりつつ。“本物の希望は期待を抱くこととは切り離されたものである”、辛い情景を繰り返す悪夢の数え切れない夜を越えた先に、たとえどんなに儚くても光は見える…と。ヤーコプとアトスが出会えたこと、ベラの思い出と気配がヤーコプに寄り添い守っていたこと、そして“愛を必需品にする”というアトスの教えが残されたこと、それらはやはり光なのだ。人生の水先を照らす…2015/09/02

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