内容説明
1913年、表面は平穏でもヨーロッパは戦争に向けて水面下で熾烈な駆け引きを操り返していた。なかでも、統一後いまだ政情が安定しないイタリアは危険な状態だった。外国の手に落ちている領土の奪回を求める急進派は、中央政府の思惑とは別に、様々な策をこらしていた…情報局にリクルートされて一年余、ランクリンとオギルロイはロンドンに戻り、新人教育や書類仕事で平穏に過ごしていた。だが、急進派のイタリア上院議員ファルコーネの警護を命じられたことで、平穏の日々は終わりを告げる。イタリアの失われた領土回復を叫ぶファルコーネは、軍のための兵器調達に飛び回っており、対立するセルビアやオーストリアに命を狙われているのだ。そんな彼が調達に躍起となっているのが、実用化されたばかりの飛行機だった。飛行技術の先進国であるイギリスに渡ってきたファルコーネを追い、危険な刺客も放たれているらしい。さっそくランクリンは一計を案じるが…激動止まぬヨーロッパを駆けめぐる、草創期のスパイたちの活躍。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
13
英国砲兵隊所属のマシュー・ランクリン大尉は、いつの間にか情報局の古参となっています。そもそも生まれたばかりの組織だし、誰もがその存在を疑わない記録に残されない謎の組織なのですが、実体は諜報には素人が集まった小振りな組織に過ぎない。コリナの重役室で暴発事件があったときの描写が秀逸なのですが、ライアルはこの荒っぽい世界を描写しながら、武器の威力、怖さ、銃やナイフに怯える人たちを実にヴィヴィッドに描きます。平気でパンパン銃を撃ち合う事はしません。これもライアルの魅力の一つかも。2010/05/14
魔魔男爵
4
「結婚とは自分を自分以外の者が限定してしまうことである」相変わらずジェンダー観は素晴しいが、やや長い上にテンポが遅くて一気読みはキツイ。第一次大戦前のスパイ戦なので、テックレベルのアンバランス観はレアだが。馬車を自動車で尾行して馬車が遅すぎるので悩んだりw2009/08/11