内容説明
失われた思春期の憧れ。ほろ苦い想い出にぼくらの胸がうずく。青春の驚異と絶望を斬新な手法で描き、異彩を放つ処女小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
305
ミシガンの田舎町でのリズボン家の娘たちの自殺事件を描く。ここには何故?という問いは無効だ。それは、とうとう誰にもわからないのだ。ジャーナリストや心理学者たちが様々な解釈を試みるが、そのいずれもが「僕たち」を納得させることはない。解説者は、そこにアメリカ凋落の予兆を見ようとしているが、さてそれもどうだろうか。本書は、むしろ事件を回想する、物語の語り手たる「僕ら」(複数の語り手)にこそ焦点をあてて読まれるべきではないかと思う。ただ、そういう読み方をすると、これはもう"Stand by Me"の世界なのだが。2015/09/25
ケイ
139
悪い冗談のようなお話。秘密の工事をして地下を掘るなんてことも、それを何とか通れば人の家に入れるなんてことも、女の子の裸が見たくてこっそり侵入するなんてことも、一度自殺未遂をした女の子に嫌味を言って一人にさせるなんて事も…、ええっ、そんなことするの?嘘でしょう? つてことばかり。一つぐらいはあり得なくも無いけど、こんなことばかり続けば、一家の女の子五人がみんな死にたくなっちゃうなんて事もあるかもしれない。10代の女の子の気持ちなんてわからないのだから。しかもみんな処女であり、それは意味があることなのかも。2017/03/04
どんぐり
73
子どもから大人へ心もからだも大きく変化をしていく思春期。恋や性に目覚め、多感な時期を迎えた五人姉妹は、生と死のはざまを漂い乱舞する。セシリア13歳、ラックス14歳、ボニー15歳、メアリイ16歳、テレーズ17歳の年子、およそ考えられない年齢設定。ヘビトンボが舞う季節、最初に自殺を踏み切ったのは、いちばん末のセシリアだ。入浴中に手首を切った状態で見つかり、一命はとりとめたものの、数日して、今度は2階から飛び降りて柵のポールに串刺しとなって死に至る。以降、残った姉妹は、死に魅入られたかのように自殺を遂げる。なぜ2017/01/26
harass
44
映画『ヴァージン・スーサイズ』の原作本。映画は見てないが奇妙な原題で思い出した。田舎の美人五人姉妹の家庭は末娘の自殺からゆっくりと病んでいく。そんな彼女らと同級生?の語り手が回想するように彼女たちの真相を再構成していく。語り手である近所の元同級生らしいが本当にそうであるか分からない。微妙な立場と視点を保っている。解説にもあるが『ロリータ』の語り手を連想した。アメリカ郊外を描きいろいろな象徴を含んでいる。描写になかなか良いと思うところがある。商品名や流行歌が豊富にでてくる。やはり小説はディテールかと。2015/07/21
星落秋風五丈原
28
【ガーディアン必読1000冊】リズボン家には、13歳のセシリア、14歳のラックス、15歳のボニー、16歳のメアリイ、17歳のテレーズの年子の5人姉妹がいた。ところが、6月ヘビトンボの季節に、リズボン家の末娘で13歳のセシリアが、風呂場で両手首を切る。これは未遂に終わる。こんなことをしてはダメだという医師に対してセシリアは言う。「先生は十三歳の女の子だったことはなかったでしょ」ヘビトンボ自身が二十四時間しか生きられず、孵化して交尾して死んでしまう命はかない昆虫である。2024/10/28