内容説明
別々に育った兄と弟の突然の出会いを描く表題作など、アメリカのサバービアの降りつもる雪のような孤独と優しさがしみわたる11篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
seacalf
34
興味本位に次々と新しい本に手を出して読み続けていると、何の為に読書をしているかわからなくなる。そんな時にバクスターの短編を読むと頭と心に不思議と静けさが沁み渡り、読書がもたらしてくれる愉悦感を再び思い出す。うまく言語化出来ないけど、心のどこかにしっくりくる感覚。大好きな作家達特有の惹きつける文章がそこにある。「たくさんの人に読まれないでほしい素晴らしい本」なんて書評もあるらしいが、そう、特にバクスターは人におすすめしなくても自分自身に大切な時間をもたらしてくれる。2024/08/29
ベック
4
よく形容されるのだが、本書も日常の出来事を描いているだけなのだ。しかし、そこで目にするドラマはまったく新鮮で驚きに満ちており、われわれと変わらぬ普通の人々なのにどこかユーモラスで真摯な登場人物たちは読み手の心をとらえて離さない。人が死ぬとか事件が起こるとか、奇妙な出来事があるというのではなく、ほんと、今のアメリカをそのまま切り取っただけの話なのに、どうしてこれだけ惹きつけられるのか?それは作者の目がつねにやさしさをもって世界を構築し、人間の真の心を描いているからなのだ。