内容説明
2021年、全世界でなぜか子供が生まれなくなって四半世紀が過ぎた。出生率が低下していっても、自分の子供はおろか、文明を受け継ぐ人類の子孫さえ得られなくなるとは、当初は誰も予想だにしていなかった。だがいまや、どんなに素晴らしい文化遺産を残そうと、数十年後にはそれを見る人間は一人としていなくなるのだ…。それが明らかになったとき、社会はどうなるか?絶望と無気力が、世界中を覆った。イギリスでは国守ザンが絶対的な権力を握り、できるだけ最後まで国民の生活水準を維持すると約束していたが、老人の自殺があいつぎ、出産を夢見る女性は想像妊娠をした。ザンのいとこで大学教授のセオは、ある日ジュリアンという若い女性と知りあい、惹かれるものを覚えた。だが、彼女は反体制組織のリーダーの妻だった。組織のメンバーから、セオはザンの執政の恐ろしい裏側を知らされる。組織がザンに目をつけられ、ジュリアンが助けを求めてきたとき、セオは思いがけない逃亡生活に巻き込まれていった。イギリスのミステリ界の実力派が新境地を拓いた、話題の近未来サスペンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
84
2021年1月1日から始まるこの物語の世界は、25年前から新たな子どもが生まれておらず人類は滅亡に向かっているというデストピア。独裁者に統治されているイギリスを舞台に、人口が減っていく中で、老人たち、若者たち、それぞれの孤独、絶望、虚無感が描かれていく。そんな世界なのに、人類が滅亡に向かっているというのに、それでもなお、格差があり、命の選別があり、殺人があり、権力争いがある。なんと愚かしく、悲しいことだろうか。ラストは明るい未来を暗示しているようでもあるが、カールの最期の言葉が意味深だ。2021/01/02
Ryuko
10
「メイ・ザ・フォース・ビー・ウィズ・ユー (SF&ファンタジー読書会)」参加&P.D.ジェイムズ 追悼 近未来小説。人間の生殖能力が失われた世界。彼女が描くミステリーと同じく、鬱々とした雰囲気。反体制グループと行動をともにすることになった国守のいとこを語り手として物語は進む。希望を失った人類の行き着く先はどこなのか? P.D.ジェイムズの訃報に触れて再読しました。さすがにミステリーの巨匠だけあって読ませます。再読ですが、読んだのがずいぶん前だったので、また新たに楽しめました。ありがとう。安らかに。RIP2014/12/04
がんぞ
2
近未来のある日、ヒトの授精能力が喪失。保存精液も。保育所、小学校、中学…と次第に閉鎖され、ベビーカーに猫の子を乗せて歩くのが流行…。人々静かな諦念で生きる。男性義務の毎月の精液検査もなおざりになっていた20年後、赤ん坊が密かに出産された。ところが現時点で唯一授精能力のあると証明された男性セオは反体制グループに属し支配者への恨みで行動…なにより貴重な彼の身体を危険にさらし
つゆり
0
思ったより読むのに時間がかかってしまった。 全体に諦観を感じさせる雰囲気が漂っている。生まれた子供は確かに希望なんだろうけど、その子と母親の人生やセオの人生を思うと、決して明るい気持ちでは終われなかった。2017/11/15
だいすいめい
0
ウォーショースキーシリーズっぽい、やはり2013/12/20