出版社内容情報
白人の父と黒人の母を持つ私立探偵ネイサンは牧師殺害事件の調査に乗り出す。彼は事件の鍵を握るUSBを手に入れたことで命を狙われ……
内容説明
ヴァージニア州の田舎町で葬儀社に勤めるネイサンは、イーソー牧師殺害事件の調査を信徒から依頼される。腐敗した保安官事務所があてにならないからだ。調査のなかで次第に、牧師に裏の顔があったことが判明する。有権者やギャングからの多額の寄付は何を意味するのか。町を支配する暴力から目を背ける神と保安官に代わり、自分の力だけで解決しようとネイサンは決意するが…現代ノワール小説の俊英の鮮烈なデビュー作。
著者等紹介
コスピー,S.A.[コスピー,S.A.] [Cosby,S.A.]
米国ヴァージニア州出身。クリストファー・ニューポート大学で英文学を学んだのち、警備員、建設作業員、葬儀社のアシスタントなど様々な職業を経て作家になる。2019年『闇より暗き我が祈り』(本書)で長篇デビュー。第二作『黒き荒野の果て』(20)、第三作『頬に哀しみを刻め』(21)のどちらもアンソニー賞、マカヴィティ賞、バリー賞の三冠を達成。『頬に哀しみを刻め』と第四作『すべての罪は血を流す』(23)はMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞長篇賞最終候補作となった
加賀山卓朗[カガヤマタクロウ]
1962年生、東京大学法学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
337
今になって出たデビュー作。後の作品にあるような重厚なテーマは持ち合わせていないが、その萌芽は至るところに感じられる。何より主人公ネイトの人物造形が出色の出来。影のあるタフガイもいいが、こういう人物も描けるのかと新鮮な驚き。口の減らない軽妙な語り口が楽しくスルスル読み進められる。元保安官とはいえ、葬儀屋の社員が事件を捜査し始める必然性は少し弱く、最終的な犯人役の登場させ方なども稚拙に感じるものの、とにかくネイトのキャラが立っていて、ひょっとしたら今まで読んだコスビー作品で一番好きかもしれないほど。2025/02/19
ナミのママ
78
主人公は海兵隊員、次に保安官補、現在は葬儀社で働くネイサン。白人の父と黒人の母はすでにいない。その事件が原因で保安官事務所を辞めている。作者の作品に一貫している黒人問題は変わらず、そして今作は暴力がかなりをしめている。死んだ牧師の調査を引き受けたことから明かされるのは、腐った保安官事務所と吐き気をもよおす牧師の実態。無敵とも思えるネイサンの暴力と下半身のタフさに笑いも加わりサクサク読める。が、後の受賞作ほどの重厚感は感じられず、ストーリーを楽しむ作品に思えた。2025/02/24
しゃお
31
コスビーのデビュー作。三作目や四作目と違い、青く若々しい印象です。そう、主人公のネイサンが闇を抱えてはいるものの、基本的には減らず口を叩くような陽気さと、文字通り強くタフな事もあり、ぐいぐい読ませます。更にはモテモテなのは盛り込み過ぎ?w ともあれ暴力と死がこれでもかと描かれる中で、ネイサン自身が怒りに我を忘れる場面では思わずもっとヤレとこちらまで熱くなるものがあります。ストーリーや事件の裏そのものは割とベタなものの、頼りになる友人スカンクなど登場人物も魅力的。シリーズ化されていなのが不思議なぐらいです。2025/04/15
タナー
26
「黒き荒野の果て」を読んで以来、コスビーの作品の魅力に取りつかれてしまった感がある。邦訳されているものは順に全て読んでいるが、今作は何と彼のデビュー作とのこと。主人公のネイトは元保安官補で、いまはいとこのウォルトの葬儀社を手伝っている。そんなネイトに、牧師が殺害された事件を調べて欲しいという信徒からの依頼が。調査を進めていくうちに牧師の"裏の顔"が明かされていくのだが...。粋な台詞、洒落た言い回し、ユーモアのセンス、等々、まさに正統派ハードボイルドの要素がぎっしり詰まった作品。これまでのコスビー作品も2025/02/28
わたなべよしお
22
とても良かった。ただ、前作よりレベルが下がったのでは?と感じていた。しかし、デビュー作だったんですね。なら納得です。というのもコスビーさんは新作のたびに筆力を上げ、どんどん素晴らしくなっていたから。もちろん、本作もたっぷり楽しめるし、むしろ、第1作で、ここまで書ける力に驚きます。今後がさらに楽しみになりました。 2025/03/12