出版社内容情報
人気作家の妻ミセス・マーチには妄想癖がある。夫は殺人犯だと信じ込む彼女は調査を始め……現実が妄想に侵されるサイコミステリ
内容説明
人気作家の妻、ミセス・マーチは誰もが羨む幸福な日々を送っていた。しかし、夫の新作小説の主人公である醜い娼婦は自分をモデルにしているという不名誉な噂により精神のバランスを崩してしまう。誰もが私を馬鹿にしているにちがいない、この家にはゴキブリがいるにちがいない、世間を賑わす殺人犯の正体は夫にちがいない。疑心暗鬼に取り憑かれたミセス・マーチが辿り着いた結末は?現実が妄想に侵される異色のミステリ。
著者等紹介
フェイト,ヴァージニア[フェイト,ヴァージニア] [Feito,Virginia]
スペイン生まれ。ロンドン大学クイーン・メアリー校で英語と演劇を、マイアミ・アド・スクールで広告学を修め、マドリードの広告代理店に勤務。退職後に一年をかけて書き上げた『ミセス・マーチの果てしない猜疑心』で小説家デビューを果たす
青木千鶴[アオキチズル]
白百合女子大学文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yukaring
74
信用できない語り手の妄想と現実のループに読者もからめ捕られていくサイコミステリ。人気作家の妻ミセス・マーチは「夫の新作の主人公である醜い娼婦のモデルは自分では?」と疑心暗鬼に陥り精神のバランスを崩してしまう。そんな時に夫の書斎で見つけた若い女性の行方不明を報じる新聞記事の切り抜き。そしてその女性が死体が発見された時、夫こそが犯人だと確信するミセス・マーチ。事件を調べる彼女の回りで起こる奇怪な出来事は現実なのかそれとも妄想なのか。そしてラストに待つ壮絶な結末。映画化も決まっているとの事で今からとても楽しみ。2023/08/06
星落秋風五丈原
28
ミセス・マーチは次第に妄想を膨らませていく。彼女だけが家の中で見たというが、やってきた業者はいないと言うゴキブリも、彼女の心に潜む邪魔者の象徴である。ジョージが殺人事件の記事を取っておいたという事実だけで「世間を賑わす殺人犯の正体は夫にちがいない」と思い込むところがもう常人と違っているのだが、あいにくその変化は他人にはわからない。他人に悩みを打ち明けるでもなく、ひたすらタイトル通り妄想を膨らませていくミセス・マーチ。幼い頃から暴力への衝動があった事が明らかになるなど、彼女自身も信頼できない語り手である。2023/08/15
あゆみらい
19
2024年初めて読んだ本。年を越しました。スペイン生まれのヴァージニア・フェイトのデビュー作。Mrs.マーチの一人語りの小説ゆえに、もう何を信じていいのか、過去も本当なのか妄想なのかわからなくなってきて、でも何故か共感できることが多く、読み進めて行けました。不思議な読み心地。違うんだけれどMrs.マーチの気持ちや困惑には共感できてしまう。不思議な作品。2024/01/03
しゅー
8
★★パトリシア・ハイスミス?退屈なわけではないのだが主人公の行動が痛々しくて読むのがしんどい。しかもミセス・マーチが陥る思い込みの罠について、自分自身にも思い当たる節がないでもないところが怖い。ここまでひどくなくても、状況を深読みして勝手に落ち込みヘンな行動をとってしまうことは、誰しも経験するのではないだろうか。ミステリ的な意味での「信頼できない語り手」ではなく、手持ちのカメラでグラグラした映像を見せられているように、状況をなかなか読み取れないもどかしさがある。自分の解釈に不安は残るけど再読はしないかな。2024/06/05
nizi
5
つらい。登場人物の境遇がつらいのではなく、文章がつらすぎる。被害者意識と妄想を延々読まされ、しかもミステリ的な展開やどんでん返しに結びつかない。同じ苦行でもソシャゲのデイリーのがまだマシだった。2024/03/01